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2025年11月30日日曜日

禍話リライト「お礼娘」

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Aさんという女性が体験した話。

Aさんの家の菩提寺にある墓地には曰くありげな塚があった。 塚はかなり古びており、立ち入りにくい場所にあった。意図的にそのような配置にしているように思われた。妙な場所に塚があるものだと、Aさんは少し気になっていた。

ある日、墓の敷地が足りないとお寺に相談しに行くことになった。両親とお坊さんが話し合っている間、運転手役だったAさんは暇になった。 先祖代々のお墓を磨くなどして暇をつぶしたが、まだ時間が余っていた。そこで、前から気になっていた塚に行ってみることにした。

塚は古びていたが、辛うじて石碑に彫られた字は読めた。どうやら、水難事故か水害の供養碑のようで、幼い子供が大勢亡くなったというようなことが書かれていた。 かなり昔にあった事故らしく、Aさんには聞き覚えがなかった。

これも何かの縁。子供の墓のようだからと、Aさんは偶然に持っていたお菓子をお供えした。その後、用事を済ませた両親を車に乗せて帰宅した。 Aさんは日頃から塚や事故現場などにお供えをする習慣があった。そのため、この日の一件は特別な体験というわけではなく、すぐに忘れてしまった。

一週間ほど経過した頃、Aさんは奇妙な夢を見た。

ふと気が付くと、Aさんは塚の前に立っていた。塚の裏手は生垣で囲われていた。天気は晴れているような曇っているような曖昧な空模様だった。

どうしてお寺に来ているのだろうと疑問に思っていると、塚の裏手の生垣を女の子が乗り越えてきた。幼い女の子だ。自分の背丈よりも高い生垣を悠々と乗り越えて、楽しそうに笑いながら通り過ぎていった。

訳も分からず困惑していると、再び女の子が生垣を乗り越えてきた。先程とは別の子のようだ。さらに続いて女の子が一人、また一人。続々と生垣を乗り越えてきて、ケラケラと笑いながら通り過ぎていく。その数は十人か二十人か。

ようやく全員どこかへ行ったかと思いきや、再び女の子の集団が生垣に現れた。続々と生垣を乗り越えては、笑いながら過ぎ去っていく。子供たちの第二波である。そのうちに第三波まで現れた辺りで目が覚めた。

「子供なりのお礼か何かのつもりだったのでしょう。でも、何だか疲れる夢でしたよ」

とAさんは苦笑した。

ちなみに、子供たちはスクール水着を着ていたそうだ。明治辺りの霊のはずだが、何故か現代の格好をしていた。

スク水を着た少女たちが大勢押し寄せる夢を見たというお話。


本稿はFEAR飯のかぁなっき様が「禍話」という配信で語った怪談を文章化したものです。一部、翻案されている箇所があります。 本稿の扱いは「禍話」の二次創作の規程に準拠します。

作品情報
出自
禍話R 第五夜 (禍話 @magabanasi放送)
語り手
かぁなっき様 (FEAR飯)

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