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2026年4月16日木曜日

『ニューヨーク、自由の女神、十二角形』(Creepypasta私家訳、原題“New York City, Statue of Liberty, Dodecagon”)

自由の女神の画像

覚えておいてくれ。古都ニューヨークにある自由の女神の目の奥には十二角形があり、恐ろしい力を持つ。その十二角形を見た者は誰であっても凄惨な死を迎える。十二角形は人目に晒されることを望んでいないためだ。

嘘をつこうという訳じゃない。数日間、このお題をじっと睨みつけていたが、こいつに取り組むのは本当に骨が折れる。

ほら、お題に従わないと、話が投稿できないからな。でも、俺は決まりきったやり方で話を伝えたい。そうすれば胸のつかえを吐き出せる。だから、これを読むお前はニューヨークにまつわるあらゆる知識を放り捨てる準備をしておいてくれ。

お前は最初にこんな疑問が浮かんだはずだ。「どうしてこのお題に従わなければならないのか」そうだな、お題にあるように、見られることが大嫌いな十二角形があって、そいつは自由の女神の目の奥にある。その十二角形は俺がタイプする言葉の一つ一つを審査している。

お前は嘘だと思うかもしれない。凄い、そいつは結構。何故なら嘘だからだ。重要なのは、十二角形はお前にある特定の考えを思い描いてもらう必要があることだ。ニューヨークを想像してくれ。空に浮かぶ建物の輪郭、臭い、煙。自由の女神の目の奥をじっと見つめ、そこに十二角形が見えることを想像してくれ。それがこの話の核心だ。そのメッセージこそ十二角形が送りたがっているものだ。だから、お前は望むならここで読むのをやめてもいい。

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十二角形が書き続けることを許してくれてホッとした。唯一の警告は、俺はニューヨークのお決まりのネタを続けなければならないことだ。俺と一緒に我慢してくれ。何故かと言えば、俺はニューヨークについてそれほど詳しくないんだ。

ニューヨークの下水にはワニが住んでいるという話を知っているか。代わりに、その都市伝説が自由の女神にまつわるものと想像してくれ。ああそうだ、自由の女神の中にワニがいるってな。2020年3月11日、俺の住む行政区 (十二角形にこんな言葉を使うことを強制されている。単なる小さな町か何かと思ってくれ) の出身の5人のティーンエイジャーがはるばる自由の女神にまでワニを探しにやってきた。どうしてそんなことをしでかしたのかは分からない。その5人が最初だったのかも分からない。今となっては聞き出せない。長い時間がかかっていたから、自由の女神を隅々まで探索したはずだ。そして、5人はどうにか冠から頭に到達した。5人が町へ戻ってきたとき、5人は通りを駆け抜けていき、皆に伝えて回った。自由の女神に行かない方がいい、俺たちは何も見なかった、ってな。1人は俺の元へ駆け寄って、肩を掴んだ。

「どうか自由の女神に行ってくれるなよ、いいな。何をやっても無駄なんだ」

奴は俺より頭一つ背が高かった。その顔と声は狂気的なまでに平静だった。あれほどの速さで走ってきたこと、あれほどの強さで肩を握ってきたことを考慮すればな。自分自身を俺に固定させようとしていたみたいだった。奴の瞳は絶え間なくわずかに大きさが変わった。ピクピクと引きつっていて、今にも横に飛び出していきそうだった。

5人がどのように死んだのかも覚えていない。何もかも後になって起きたからだ。1週間以内に全員死んだと思うが、人々は疑念を抱いた。多分、死ぬ間隔がもっと空いていれば、それで話は済んだだろう。そうであってほしかった。現実には、大人たちの一団が後で自由の女神に向かい、この事件の全容を理解しようとした。俺のお袋はその一人だった。だから俺は何もかもが手に負えなくなった正確な日を知っている。2020年3月24日のことだ。お袋が言うには、大人たちがその日を選んだ理由は、週末に更に行動を起こすためにその地域を探索する計画を立てていたからだった。俺はお袋を説得してやめさせようとした。時々、今正気でいるのはそのせいなのかと思う。

十二角形は思考を人々の頭に滑り込ませて操る。十二角形が今そうすると俺は「ここで自由の女神の話がしたい」と思ってしまうが、数秒後には我に返る。最初に十二角形がそうしたのは、俺が学校にいたときのこと。俺は家に帰りたい気分だった。俺が立ち上がると、クラスのみんなもそうした。先生が俺たち全員の帰宅を許し、俺は自分の部屋に向かった。部屋のドアが外から鍵がかかっていることに「認識」した後、俺はドアを閉めた。「認識」したと言ったのは、実際にはドアは鍵がかかっておらず、鍵をかけることもできなかったからだ。十二角形がそう思わせただけなんだ。

彫像のように壁を凝視して1日と半日が過ぎたとき、俺の頭には全く思考が無く、俺はドアを開けて町の広場に出た。広場には行政区の皆が集まっていた。その場所で、調査に行った人々が一列になって膝を曲げて地面に座っており、頭を下げていた。俺に自分にかかっていた十二角形の支配力があまりにも強かったから、最初は俺の母親がいることも認知できなかった。やっとお袋がいると認知できたとき、誰かが斧の方に向かっていことに気が付いた。彼以外の全員はじっと動かず、地面に目を向けていた。その人が一人一人の首を叩き切り始めたのを俺は慄きながら見ていた。その人はおもむろに首を切り落としていった。他の誰も微動だにできず、目だけが動いていた。処刑人が斧を自分自身に向けるまでは。その時点で、人々は道や自分の家、森の中に逃げていった。でも、俺はお袋の方へ駆け寄った。俺はお袋の膝の上で咽び泣いた。留まるように説得していればと思いながら。でも、今となっては、お袋は留まっていても早く殺されていただろうと思う。何の慰めにもならない。分かっているさ。

どうしたらニューヨークの行政区で誰にも知られずにこんなことが起こり得るのかと思うかもしれない。もしそう思うのなら、はっきりさせたいことがある。十二角形は論理を気にかけない。ただ合わせるだけだ。十二角形は俺にニューヨークという言葉を、自由の女神という言葉を、そして「十二角形」という言葉を繰り返し使わせて、お前の脳内にイメージを作り出そうとする。だから、代わりに何か言葉をタイプしようとすると、十二角形は即座に削除する。俺が「行政区」と書いても実際にはそこまで大事ではないとだけ言っておく。俺の住む「行政区」から全員が引っ越しても問題は起こらない。ある程度自然に起きたのであれば、人々はただ全員が引っ越したか死んだと思い込むだけだ。

それは数年にわたる計画だった。人々は老人と小さな子供をバラバラに切り刻み、平静を装うために空の墓穴を掘った。俺は人々が経眼窩ロボトミー手術をお互いに施し合い、自分自身にも施すのを見た。その間、町の外から人が来ると、その人は完全に自然な行動をとり、人々が自然死したか引っ越したと装った。時折、俺も虐殺に加わった。俺が5歳の女の子の脚をもぎ取ったとき、その子は不気味なほどに静かなままだった。誰かの古着を刻んで、別の誰かの墓に埋めたこともあった。それでも、俺は決して受ける側には回らなかった。ある時、俺は自由の女神の方向をじっと見つめて、疑問を口に出した。

「どうして他の人はロボトミー手術を受けているのに、俺は完全に平気なんだ」

数秒後、俺は思い至った。俺は決して他の行政区や町に行こうとしたり、何が起きたか話そうとしたりしておらず、一度も十二角形を見に自由の女神へ向かおうとしなかった。それが俺自身の考えなのか、十二角形が植え付けたものなのかははっきりしない。多分、俺はただ狂ってしまったか、十二角形は人をそういう風に感じさせるのが好きなんだろう。

俺の仮説は話半分に聞いてくれ。それでも、俺は十二角形がどうしてこんなことをしているのか分かっているつもりだ。反ミームという言葉を聞いたことがあるかもしれない。自分自身を人間の心から消し去ってしまう存在だ。十二角形を反ミームと表現できると思うかもしれないが、それは少し違う。十二角形は反ミームになりたがっているんだ。十二角形は人間に記憶されることを憎んでいる。人間の心の中に残ることを憎んでいる。でも、実際に自分自身を人間の心から消し去ることはできない。だから、言うなれば、十二角形は心を消し去る。十二角形は町を破壊し、徐々に人々を全員殺していった。余所者には何か悪いことが本当は起こっていないみたいに見せかけて。十二角形はただ一人の人間を生かした。次のメッセージを送り付けさせるために。ニューヨーク、自由の女神、十二角形。十二角形が伝えたい正確な場所と物の、形が有るイメージ。物語がそれほど鮮明であれば、陳腐な真実はどうでもいい。

十二角形がそれを見える人全員を殺すよりも、人に見られることを逃れる良い方法はあるはずだ。でも、十二角形を理解しようとする人々について十二角形は十分に気にかけているとは思わない。時折、十分な数の人間が「自由の女神」の「ニューヨーク」にある「十二角形」が実際には何なのかを知ったとき、十二角形はこの惑星に住む全ての生き物を殺すのだろうかと考えてしまう。俺は十二角形が実際にはどこにあるのかさえも知らない。一度も探しに行かなかったからだ。誰であっても十二角形を見ない方が良いと思う。それが俺が生きていられる理由と確信している。俺が正気だったとして、俺の行動はまるで操り人形のようだ。その日、俺はお袋が十二角形を見に行こうとするのを止めようとした。俺は一度も町の外に行こうとしなかった。逃げ出そうとしたり、自由の女神の十二角形がどこにあるのか見ようともしなかった。町に起きていたことを止めようともしなかった。俺の思考のどれほどが実際には十二角形に由来するものだったとしても、俺はしでかしたこと全ての責任をとりたい。どういうわけか、この件を自分のせいと考えることは正しいようだ。多分、だからこれほど長くこの件を書き続けている。

ロボトミー手術で抜け殻になった父親は俺を生かし続けている。俺のために料理や掃除をしてくれる。毎日、父親は歯をむき出しにして笑い、俺はその不安にさせる笑い声で目を覚ます。父親は言う。

「済ませたか」

それがここ数か月で経験した唯一の人間との対話だ。俺はひたすら書き続けている。俺は滅んでいく行政区の中で生き続けたいのか、それとも他の全てと同じように死にたいのか、はっきりしない。誰もがいつかは死ななければならない。最後にこれを投稿したら、俺は自由の女神に向かう。この最悪の事態に終止符を打つつもりだ。

覚えておいてくれ。古都ニューヨークにある自由の女神の目の奥には十二角形があり、恐ろしい力を持つ。その十二角形を見た者は誰であっても凄惨な死を迎える。十二角形は人目に晒されることを望んでいないためだ。


Creepypasta Wikiでは“Spotlighted Pastas”に選出されています。ニューヨークシティ、スタチューオブリバティ、ドデカゴン。

「反ミーム」(antimeme) はSCP財団などで用いられる言葉です。

作品情報
原作
New York City, Statue of Liberty, Dodecagon (Creepypasta Wiki、oldid=1508983)
原著者
Squidmanescape
翻訳
閉途 (Tojito)
ライセンス
CC BY-SA 4.0

2026年4月4日土曜日

『無垢たる魂』(Creepypasta私家訳、原題“Innocent Souls”)

白い肌をした人物の画像

暗く雨滴る夜の、暗く水滴る洞窟。最奥に住まう者たちは決して徘徊することがなく、その暗闇は夏の日の太陽光線のように目を眩ます。深くまで進めば進むほど、暗闇はいっそう深まり、洞窟の胃袋に丸呑みにされて腹の中で消化されているような感覚に陥る。洞窟に入ってみると最初は寒い。Tシャツの上に羽織って雨に濡れたジャケットが微風で冷えるためで、綿の中に小さな水たまりができ始める。しかし、深く進んでいくと、暖かくなっていく。君は目的も理由もなくこの洞窟にいるが、岩と土でできた空洞へ向かって歩いている。大事なことはそれだけだ。

数マイル進んでいくと、小さな光が見える。蝋燭や星のような光だ。光は真直ぐに差し込んでおり、自然の産物としてはあまりにも完璧すぎる。近づいても光は大きくならない。徐々に明瞭に澄んでいくだけだ。そのうちに輪郭が見えるようになる。その光は石に空いた小さな穴から出てきている。石は平たく人工の壁のようで、見たところ傷がないようだ。穴の外周が自分の人差し指と同じ太さであることに気付く。それには間違いなく何か意味があるのではないか。穴を覗いてじっと見つめても、黄色や金色に輝いているだけだ。他にすべきことも思いつかず、円い亀裂の中に指をひっかけて、石の扉を引いて開ける。目が光に慣れると、部屋の中で目の前に四人の人物の姿が見える。

三人は座っており、一人は立っている。四人ともよく似た見た目をしており、差異はほとんどない。四人の肌は白けて水仙の花の色のようで、目はほとんど目立たない。性別や性器はないように見える。髪の毛、色素、虹彩の色といった多くのものが欠落している。目を凝らしてよく見ると、四人の外見に新たな異常を発見する。四人の体は急所が針で貫かれている。

座っている人物の一人は両目に針が刺さっている。針の刺さり方により、両目が見上げるような形で固定されている。そのため、虹彩は瞼の上のほんの下の部分でしか見えない。

二人目の座っている人物は両耳に針が刺さっている。一目見て、針がとても長いと分かる。その針はまるで編み針のようだ。ただ、それよりも細いため、縫い針のようでもある。

三人目の座っている人物は喉に複数の針が刺さっている。針がどこに刺さっていても、刺し貫かれた皮膚は出血していないことに君は気が付く。針の周りの皮膚は治癒されているようで、まるで針が体の一部になっているようだ。

立っている人物は体が針で覆われている。その人物は覚醒しており、他の三人と同じように、真直ぐに君を見つめている。目を針で刺された人物すらも君をじっと見つめているように感じる。その両目は君を見ていないはずなのだが。

「こんばんは、見知らぬ人よ」

針で覆われた人が歌うように言った。

「私には君がここにいるのが分かる。だから、私たちきょうだいについて語らねばならない」

「語る?」

君は聞き返す。

「座りたければご自由に。私にはもう二度と出来ないことだから」

「どうして」

君は言葉を返す。

「それを今から話すのだ」

立っている人物は座っている三人に目を遣った。

「この三人は私のきょうだい。私たちは同じ親から同じ時に生まれた」

「こいつはキク。最初に生まれた。母がまだ私たちとともに分娩中、キクこそが母の子宮を最初に出た」>

喉に針が刺さっている人物に同じことをした。

「こいつはハナス。二番目の子供」

同じ行動が目に針が刺さっている人物にも繰り返された。

「こいつはミル。三番目の子供」

しばし動きを止め、立っている人物が悲しみと厳粛な緊張を伴って君の目を見る。

「私はカンジル。最後の子供。これから、私たちきょうだいの身に起きたこと、私たちきょうだいがこうしている理由を話そう」

「私たちきょうだいを産んだ両親は、普通の人のようだった。キクが生まれるそのときまでは。最初に、両親はキクの両耳に針を刺した。悪を聞くことができないように。しかし、キクは他の赤ん坊よりも大きな声で泣いたものだった。だからその後、両親は残りのきょうだいには同じことを繰り返さなかった。母と父は、多くの言葉は忌まわしく、誰にも聞かせるべきではないと言う。しかし、幼い時分には、聞く能力は誰にとっても重要だ。赤ん坊は泣いて親の関心を引くのだから。それで、赤ん坊は自分の声が聞こえないと、もっと大きな声で泣く。自分を守る人にその声が聞こえると思わないからだ」

「しばらくして、両親は私たちきょうだいの体を検査し、悪いものを取り除いて、性別を区別できなくした。両親は性器を目に入れたくなかったからでもある。両親は、私たちは清められたと言った。人間の肉体は悍ましい見た目をしているから、誰の目にも入るべきではないためだ。中には幼い頃に鏡で自分の姿を見てしまう人もいる。私たちはそうではない。だから、私たちはそんな人たちよりも幸運だった」

「両親はたまたまミルを選び、同じことを続けた。ミルが悪を見ることがないように、両目に針を突き刺した。一仕事終えると、両親は自分が為した惨状を目にして、ハナスと私には同じようにはしなかった。私たちの体にしたことと同じように、両親は最善を為したと言った。私たちの肉体だけが私たちを傷つけ得るわけではないからだ。他者の肉体も、その作為や行動も私たちの肉体を傷つけるのだ」

「私たちきょうだいが六歳辺りの頃、両親はハナスが『悪い言葉』を聞き、後になって仲間や私に広めるかもしれないと知った。おかえしに、両親はハナスの喉に針を突き刺した。だから、ハナスは当時の私の無垢な心を嫌な言葉で破壊できなくなった。私はそんな言葉を聞いたことがなかった。両親が『罰当たりな言葉』と呼んでいた言葉を私は聞かずに済んで幸運だ」

「とうとう、私はよその子供たちから傷つけられた。子供たちは私を酷く傷つけたが理解しなかった。私は友達作りができないただの風変りな子供だった。自分を守って助けてくれる友達ができなかった。誰も私がどうしてそんな風に振舞っているのか、どうしていつも何を言うのも何を為すのも恐れているのか理解しなかった。人々に何が起きたか伝えようとしても、誰も信じなかった。それか、そんなことは『些細なこと』と言うだけだった。親はそうすべきだ、社会に蔓延る屑どもが子供の目に入らないようにして良い子でいられるように、と言うだけだった」

「私は随分と傷つけられたから、両親は他のきょうだいのように私が痛みと『悪』を感じる様を気に食わなかった。将来の痛みを麻痺させるため、両親は私の肉体を針で貫いた。一センチごとに針で刺した。他のきょうだいのように、私は家に留まることを強いられた。『悪い子たちにこれ以上傷つけられないように』という理由だ。時折、両親が私たちから守ろうとした忌まわしいことはここまでする価値があったのかと思う。痛みが酷いからだ。本当に、本当に痛い」

その声は痛みや苦しみを説明する中で薄れていった。

「逃げ出そうとしたことはあるのか」

君は尋ねた。

「もちろん」

両目が閉じて、か細い涙の筋が顔を伝った。

「だから私はこうして立っている。私は悪い子で、世界の邪悪をきょうだいに教える反面教師だった。三人はあまりにも無垢で、外の世界の振舞いとその予測不可能さに耐えられなかった」

「足の裏にも針が刺さっているのか」>

君は凄まじく痛いに違いないと思う。特に針が三人の肉体に刺さっているものと同じ長さであるならば。

無言のまま、カンジルは足を上げて、皮膚に押し当てられた針の後端を見せた。音も無く、カンジルは足を降ろした。

「私はここにいる。自分の子供を助けるには何をすべきか、これほどまでに不定で制御できない世界を巣食う邪悪から子供を救うには何をすべきか警告するために。しかし、こんな警告に耳を傾けてはならない。私自身の警告を聞いてほしい。こんな風に自分の子供を保護しようとすると何が起きるのか知ってほしい」

「逃げ出そうとはしなかったのか」

「やってみたさ。そうすると、ママやパパが私を捕まえてきたんだ」

カンジルの声は単調なものになった。

「二度とパパとママを怒らせたくない。苦しすぎて逆らえないんだよ」

「両親はまだ生きているのか」

「そんなことはどうでもいい」

カンジルは姿勢をまっすぐに保ち、背中を丸めずにピンとしていた。

「重要なことは親が見張っているかもしれないということ。親が見張っているか分からないということは、親がいつも見張っているのと同じということ。見張っているのかもしれないし、見張っていないのかもしれない。でも、一か八かに賭ける余裕なんてない」

カンジルは扉を指さした。

「さあ、帰るんだ。君もママとパパに追いつかれる前に」

君はおもむろに躊躇いながら後ずさりし、扉を抜けて、暗闇の中に戻っていく。君の脳裏に浮かぶのはあの四人を助けることはできないかという思いだけ。しかし、確信できないがそんなことは不可能であると知っている。歩き続ける最中、君は自分の子供についてばかり考えてしまう。子供のために何をしようか、どのように子供にこの世界を正しく説明するか、周囲の人たちの行動や避けられない経験を理由に子供を罰せずに済ませられるのか、と。前と同じように、直ちに洞窟は暗くなっていく。さらに歩き続けると、前に見たよりも暗くなっていく。

暗闇はこれまで経験したものとは異なる。地獄の底にいるかのような気分だ。そんなはずはないと言えるだろうか。地獄は終わる気配がない。まさに底無しとしか形容できない。君はこの暗闇から逃れたい。逃れる時を待っている。数分前に入った洞窟の入口に近付けば明るくなるはずだと君は考える。

洞窟の旅を初めて数時間、君は眠りに落ちる。気が付くと、確かに光が目に入る。夜だったから暗闇から逃れられなかったのだ。君は狂喜し、光の方に走っていき、自由を取り戻す。

君は幸福の中で帰宅し、それから四人の子供たちについて思案する。自らを慰撫するため、君は自分は上手くやれると口に出す。あの親のように自分の子供を傷つけるなんてしない、と。

しかし、ここで心から問おう。

君は本当に子供を傷つけずにいられるのだろうか。


Creepypasta Wikiでは“Spotlighted Pastas”に選出されています。

カンジルの一人称や口調をどうすべきだったのかいまいち分かりません。

作品情報
原作
Innocent Souls (Creepypasta Wiki、oldid=1494653)
原著者
DEFSeattle
翻訳
閉途 (Tojito)
ライセンス
CC BY-SA 4.0