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2019年11月19日火曜日

結局のところ、"This Man"とは何だったのか


EVER DREAM THIS MAN?より引用

"This Man"とは?

 2008年冬、イタリア人のAndrea Natellaは奇妙な夢を見た。不思議な男が現れて、自身についての情報を集めるウェブサイトを作るように指示したのだ。この男は数多くの人々の夢に現れる謎多き人物であり、その通称は"This Man" (直訳すれば「この男」)。

 NatellaがThis Manの啓示に従って制作したウェブサイトEVER DREAM THIS MAN?によると、This Manの存在が初めて確認されたのは2006年1月のこと。ニューヨークのある著明な精神科医が、女性患者から同じ男が度々夢に現れるという話を聞いた。女性患者はその男の似顔絵を描いた。私生活についてのアドバイスを受けたこともあると語った。現実では会ったことがなく、夢の中でのみ現れるという。

 精神科医は似顔絵を机の上に置きっ放しにしていた。数日後、ある男性患者がその絵を見て、自分の夢によく出てくる人物だと訴えた。男性患者も現実ではその男に会ったことがないという。精神科医は別の精神科医にその似顔絵を送った。すると、数ヶ月のうちに、4人の患者がこの男が出てくる夢をよく見ていることが判明。最終的に、2006年1月から今日までで、少なくとも2千人以上がこの男を夢に見たと主張した。この事例はロサンゼルス、ベルリン、サンパウロ、テヘラン、北京、ローマ、バルセロナ、ストックホルム、パリ、ニューデリー、モスクワなど、世界中に及んだ。この男の夢を見た人々の間に関係性や共通の特徴は確認されていない。また、似顔絵と類似した容貌の人物も知られていない。

 以上がThis Manの概要である。

 有名な似顔絵はNatellaが『Ultimate Flash Face』というソフトウェアで作成したものである。このソフトウェアを選んだ理由は、似顔絵制作用のソフトウェアとして最初に見つけたものを選んだだけらしい。また、30年前にThis Manの夢を見た人がいた証拠も存在するという。インド人のグルArud Kannan Ayyaのように、自身がThis Manであると称する人もいるらしい。

5つの説

 前述のEVER DREAM THIS MAN?では、This Manの正体を説明する5つの説が挙げられている。

元型説
This Manはユングの精神分析理論における元型の1つであるとする説。
創造主説
This Manは創造主が現世に顕現する化身の1つであるとする説。
夢の旅人説
This Manは現実に実在する人物であり、他人の夢に入り込む能力を持っているとする説。現実でも夢で現れるのと同じ姿をしていると主張する人もいれば、全く異なる容貌であると考える人もいる。大企業がThis Manの夢を見せているという陰謀説もこれに含まれる。
夢の模倣説
This Manの話を知って印象的に思ったために、夢の中でもThis Manを登場させてしまうという現実的な説。
覚醒時の認知説
普通、夢で見た人の顔を正確に覚えているわけではないため、覚醒時に夢の中の人の顔をThis Manに置き換えて解釈してしまうという現実的な説。

夢の事例

 EVER DREAM THIS MAN?では具体的な夢の事例も紹介されている。夢を見た人の住所などは伏せられている。訳出を試みたが、誤訳が混在する可能性もある。ご容赦いただきたい。

ここ数年間、何度も同じ夢を見ている。夢の中では、背が高く色黒の男が写真を見せて、この男はお前の父親かと尋ねてくる。写真の中の人物は、今までに一度も会ったことがない男で、件のThis Manである。自分の父親とは全く似ていない。それなのに、私は何故か自分の父親だと答えてしまう。普段はここで目が覚める。そのときは非常に穏やかな心地でいる。夢がさらに続くこともある。夢の中で、私は父の墓の前に立っている。花を供えたときに気づくのだが、墓に置いたはずの遺影が無くなっている。
This Manを最初に夢に見たときに恋に落ちた。本当は醜い男だと分かっている。それでも、夢に出るといつも、ロマンチックな身振りと甘い言葉で私は夢中になってしまう。彼は花や宝石を買ってくれる。ディナーに連れて行ってくれたり、浜辺で夕焼けを見せてくれたりする。
よく自分が住む街の上空を飛ぶ夢を見る。空の上から友人の様子を見たりする。ある家の方に行ったときから、飛行中にThis Manに出会うようになった。空を飛ぶ夢を見るときに毎回出てくるわけではないが、出てくる頻度は高い。This Manも空を飛ぶが、決して話しかけてこない。
初めてThis Manが出てくる夢を見た頃、私は仕事で苦労していた。その夢の中で、私は巨大なショッピングモールの廃墟を彷徨っていた。すると、突然にThis Manが現れた。私は彼の元から逃げ出した。This Manは1時間ほど私を追い回した。最終的に私はスーパーマーケットのキッズエリアで追い詰められた。すると、This Manは微笑みかけ、レジへの行き方を教えてくれた。そこで目が覚めた。その夜以来、This Manは私の夢にいつも現れ、夢から覚めるにはどうすればいいか案内してくれる。そうして私は目が覚める。
私は同性愛的な関係を持ったことがない。空想したことさえない。しかし、いつもThis Manと性交する夢を見る。私は夢の中で悦びを感じてしまう。時折夢精していることもある。
私がThis Manを夢で見たとき、彼はサンタクロースの格好をしていた。This Manが現れたとき、私はまるで幼い少女のようにとても嬉しく感じた。This Manが私に微笑みかけると、彼の頭は風船になり、空中を浮いていった。どれほど頑張って取ろうとしても、手が届かなかった。
This Manが出てくる夢を見たのは私が10年生の頃。一度だけで、繰り返し夢に出てきたわけではない。しかし、記憶に残るとても怖い夢だった。夢の中で、私は部屋の中でスツールに座ったまま動けなくなっていた。数フィート離れたところにテレビが置いてあった。そこに会ったことのない2人の男 (This Manではない) がやってきて、私を襲ってきた。目が覚めたとき、私は汗と涙でびっしょりで、叫び声をあげていた。どうにか眠りにつくと、またその部屋にいた。私は叫び声をあげ、泣きわめき始めた。すると、This Manがテレビに映った。私はThis Manに襲ってこないでほしいとお願いした。This Manは無表情のままで、言葉も発さなかった。This Manは私の喉を切り裂いた。そこで目が覚めた。私はThis Manが自分を悪夢から解放してくれたのだと思っているが、数週間はThis Manのことが頭から離れなかった。私はThis Manを描いたスケッチを今も持っている。変なことだとは分かっている。
This Manが夢に出たとき、鏡の中から無言で私を見ていた。This Manは眼鏡を掛けており、全く動かなかった。まるで彫像のようにじっとしていた。
夢の中のThis Manはブラジル人でとてもハンサムだった。学校の先生のような感じで、右手に指が6本あった。This Manは、もしアメリカで核災害が起きたら北へ行けと言った。
This Manを全く別の夢で3回見たことがある。似顔絵とは若干違っていたが、すぐに彼だと分かった。どの夢でも同じように突然に現れて消えていった。毎回、「それで終わりだ」というメッセージを残した。似顔絵との違いは、頭頂部の髪の毛がもう少し長いことと、眉がそこまでふさふさとしていないことであり、それ以外は同じである。私はThis Manに対して恐怖を覚えなかったが、疑問はたくさんあった。

 NatellaはVICEというメディアで別の夢の事例を紹介している。

日付: 2014年1月5日
場所: アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ
自分の部屋にいると、両親の部屋からくぐもった叫び声が聞こえた。それから、部屋の外の廊下で何かが引きずられる音が聞こえ、ドアがゆっくりと開いた。そこにはThis Manがいた。This Manは何かを引きずりながら部屋に入ってきた。引きずられていたものは両親だった。This Manはゆっくりと両親を壁に寄りかからせた。両親は私の方をじっと見ていた。This Manは壁に血で何かを書いて、それから私の方に目を戻してじっと見つめてきた。部屋が暗くて何が書かれたかは読めなかった。私は呼吸を抑えて寝たふりをした。しばらくして、目がだんだんと暗闇に慣れてきた。壁にはこのように書かれていた。「お前、起きてるだろ」
日付: 2013年9月2日
場所: オーストラリア・パームビーチ
事が始まったのは私が7歳の頃。10年間、火曜日と金曜日に全く同じ夢を見続けた。私は今は17歳で、This Manのことは見慣れている。ただ、見る夢はあまり気持ちのいいものではない。夢の中では、私はベッドに横たわっている。This Manはカウボーイハットを被っていて、私の方に身を乗り出して、変な音をたてている。まるで唸っているかのようだ。シャツの上には丸い金のペンダントが見え、そこには「北へ行け」と彫られている。寝室をまたがって私を見つめていることもある。朝に目が覚めると毎回、意味もなく泣き出してしまう。This Manのせいでホルモン異常を起こしているみたいだ。このウェブサイトでその絵を見たとき、恐怖で泣きわめいてしまった。This Manは決して話しかけてこなかった。変な音を出すだけだ。
日付: 2013年3月7日
場所: アメリカ合衆国ユタ州
夢では真夜中で、This Manは公園を通って私の後をつけてきた。どうして追いかけてくるのか理解できず、私は走り出した。This Manはたやすく同じペースで後をついてきた。This Manは小さくうめくと速度を上げ、私の目の前に現れた。そして、手を伸ばして逃げ出そうとする私の動きを止めた。This Manは私を引き寄せ、ある言葉を発した。今も毎晩この言葉について考えている。「2021年4月9日に北へ行け。それだけが生き延びる術」。This Manはこう言って走り去った。もっと聞き出そうと追いかけたが、ついていけなかった。遠くへと姿を消していくのを見ていると、奇妙な感覚に陥った。This Manが視野から消えたとき、すぐに目が覚めた。

 VICEには2011年1月9日のアメリカ合衆国フロリダ州フォートローダーデールでの事例も掲載されているが、上手に訳出できなかったため本稿では紹介しない。

"This Man"の正体

 ところで、This Manの情報提供を呼びかけるウェブサイトを制作したNatellaという人物だが、その専門はマーケティングである。ご想像のとおり、This ManはNatellaの傑作の1つであり、数千人もの人が見たとされる謎の男は実在しない。ただし、Natellaの目的は明確には分かっていない。社会実験か、実力を示すためのデモンストレーションか。The Daily Dotでは、映画監督Bryan Bertinoが製作する予定だった映画の宣伝のためと推測されている。This Manという同名の映画が公開される予定だったが、現状では映画の計画は凍結しているらしい。

 2015年1月15日にThis Manを事実であるかのように記載した記事を掲載したVICEは、あれは実は嘘でしたという記事も同日に掲載している。前者は午後2時掲載、後者は午後11時40分頃掲載。後者の記事はNatellaの公式サイトにあるThis Manを紹介するページで引用されている。まるで隠す気がない。

 This Manが話題になったのは、良くも悪くも真に迫っていたためでもあるだろう。じっとThis Manの似顔絵を眺めていれば、もしかしたら夢の中でThis Manが現れるかもしれない。せめて、ホラーな夢である方が話の種にはなるだろう。ラブロマンスだったら洒落にならない。


どういうわけか本邦で漫画の題材に。週刊少年マガジンやマガジンポケットで2018年から2019年にかけて連載された。作画は『BLOODY MONDAY』で有名な恵広史。 また、フジテレビのテレビ番組『世にも奇妙な物語』の2017年公開のエピソード「夢男」もThis Manを題材としている。 この漫画やテレビ番組がNatellaのマーケティングと関係があるかは調査しきれなかった。
NatellaのEVER DREAM THIS MAN?にはファンアートを掲載するページもある。その中にはThis Manは虚偽であると特集する雑誌のページを引用した写真も混入している。意図的かは不明。

参考文献

 いずれも2019年10月下旬に参照。

  1. Natella, Andrea. EVER DREAM THIS MAN?.
  2. Natella, Andrea. This Man.
  3. Cook, James (2013年10月17日). When déjà vu is just a marketing stunt online. The Daily Dot.
  4. Butler, Blake (2015年1月15日). The Face Everyone Dreams About. VICE.
  5. Ugh, We Just Got Hoaxed: The Real Story About the ‘This Man’ Dream Face. VICE. 2015年1月15日.
  6. Newitz, Annalee (2013年10月25日). Why Are Thousands of People Dreaming About This Man? GIZMODO.
  7. 『This Man その顔を見た者には死を(1)』(恵 広史,花林 ソラ). 講談社コミックプラス.
  8. 中条あやみ初主演で、不気味過ぎると話題の男This Manとまさかの共演!!. フジテレビ.

2019年10月14日月曜日

【ゆっくり語る奇妙な事件】ネットオークションで呪われた絵が出品された話【eBay Haunted Painting】


 前作「コニシタカコ事件」に引き続き、にニコニコ動画とYouTubeで動画を投稿した。この動画は拙ブログの記事「"The Hands Resist Him"、呪われた絵がeBayで出品された話」をベースにしている。動画制作にあたって事件を再調査したところ、記事で追記や修正が必要な箇所があると発覚。どういうわけか、参考文献によって情報が異なる部分がある。怪談の真偽以前に、参考文献の真偽にも謎が多い。

 この動画シリーズの続篇は未定である。「事件録」ラベルには『「ニューメーカー事件」、フランネルの子宮の中で』という記事があるが、この記事は動画化しない予定。

素材の提供元および参考文献

 解説動画の末尾に使用した素材の提供元と参考文献を掲載しているが、この場で改めて紹介する。

素材・ソフトウェアの提供元

 素材・ソフトウェアの提供元は下記の通りである。ただし、ニコニコモンズ由来の素材はコンテンツツリーに掲載したため省略する。コンテンツツリーに登録した素材も含め、この素材やソフトウェアがなければ動画は完成しなかった。改めてお礼申し上げる。

参考文献

 動画制作にあたって、動画の元となった記事で紹介したものだけでなく、下記の情報源も参考にしている。

  1. About Stoneham Studios. Stoneham Studios. 2019年10月12日閲覧.
  2. Hands Resist Him / eBay Haunted Painting. Know Your Meme. 2019年10月12日閲覧.
  3. John Marley. IMDb. 2019年10月12日閲覧.

 件の絵画とその続篇はStoneham Studiosのウェブサイトで鑑賞できる。例のオークションのページは現存しないようだが、O'Neill氏の小説The Hands Resist Him: Be Careful What You Bid Forの冒頭でオークションのページのスクリーンショットが引用されている。その部分はAmazonで試し読みが可能である

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