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2024年11月17日日曜日

enza版シャニマス6.5th、シャニソン1stアニバーサリーイベントの記録

先日、enza版シャニマスは6.5周年、シャニソンは1周年のアニバーサリーを迎えた。アニバーサリーイベントは大盛況……だったら良かったのだが、実際のところは学マスの陰に隠れて風前の灯と言ったところ。

アニメが最悪の出来だったものだから、私自身もシャニマスに見切りをつけようか考えている。アニメ製作会社だけに責任があるのであればまだしも、統括している高山Pと池田Pの影響が大きいのは明白である。アニメがあの体たらくでは、ゲーム自体の今後も危ぶまれる。

イベントでは福丸小糸の報酬だけ貰っておいた。これまでの報酬も含めて、ここで紹介しよう (需要があるかは知らないが)。 高山Pとしてはイベントの参加者を増やしたいのかもしれないが、餌で釣って苦行を強いるのは間違っている。餌で釣るにしても、せめて楽しいゲーム体験を提供してほしいものだ。

enza版シャニマス

5.5thアニバーサリー 金の手紙

5.5thアニバーサリー 金の手紙

6thアニバーサリー 金の手紙

6thアニバーサリー 金の手紙

小糸のキャラクター性を考えると当然だが、当たり障りのない内容である。文面にまで「……」をつけるのはおかしいが、そこに目を瞑れば小糸の性格に合った内容と言える。 見所があるとすれば、丸っこくて可愛らしいが綺麗というわけでもない文字か。実に小糸らしい筆跡。

キャラクターによっては凝った内容だったらしい。当然ながら、苦行の対価に釣り合う内容であった方が嬉しい。 ただ、変に捻った内容にしても小糸らしくはなく、難しいところ。 シャニアニを見てからはいっそうのこと、気取らない真っ当なキャラクター性というもののありがたみを噛み締めている。

尤も、小糸は人気がないため、景品を貰うのはそこまで難しくなく、苦行という程でもないのだが……。

6.5thアニバーサリー プレゼント

6.5thアニバーサリー 小糸からのプレゼント

プレゼント自体はノクチル共通らしく、高級なボールペンのようだ。 『THE IDOLM@STER SHINY COLORS GR@DATE WING 07』収録のオーディオドラマ「方・游」は、プロデューサーへの贈り物としてボールペンを買うというエピソードである。それと関係するかもしれない。

シャニソン 1stアニバーサリー 留守番電話

感謝の気持ちと、真っ当にアイドルとして頑張る姿が伝わる。こちらも小糸らしい素朴な内容。声がつくと、手紙の文字よりはありがたみがある気がする。

苗字が福丸なのだから、電話で福丸と名乗るのは当然ではあるのだが、少し不思議な感じ。

2024年9月23日月曜日

Creepypasta私家訳『ハッピー・サン・デイケア』(原題“Happy Sun Daycare”)

作品紹介

はすお様からのリクエストで翻訳しました。廃業した保育園に隠された過去の物語です。

“Happy Sun Daycare”は「ハッピー・サン保育園」などとも訳せそうですが、「ハッピー・サン・デイケア」の方が通りがよさそうに思い、こちらを採用しました。

作品情報
原作
Happy Sun Daycare (Creepypasta Wiki、oldid=1509662)
原著者
Chelsea.adams.524
翻訳
閉途 (Tojito)
ライセンス
CC BY-SA 4.0

ハッピー・サン・デイケア

私の住む町から数マイルほど外れに、古い邸宅が建っていた。この邸宅はデイケアに改装されていた。利用者は朝に子供を車から降ろし、夕方に子供を拾って帰るのである。しかし、このデイケアは数年前から廃業していた。前庭が建物からほんの数フィート離れた場所にあり、そこに看板が立っていた。看板には「ハッピー・サン・デイケア」と書かれており、可愛い見た目で漫画風に描かれた太陽の絵もあった。この前庭には柵が無く、その中には遊具が設置されていたが、故障しており、錆び始めていた。滑り台、ぶらんこ、雲梯、メリーゴーランドはかつて、外で駆け回ったり遊んだりしていた子供たちが群がっていた。その後、遊具はその地域に棲む鳥やリスの止まり木となり、子供ではなくアリが群がっていた。

私はハッピー・サン・デイケアについての記事を書くことにした。自分が執筆の仕事をしているニュースブログに掲載するのである。その理由の一つは、現在、周囲にいる人の数名が、そのデイケアに通っていたことがあったためである。彼らがデイケアで経験したことや、後の人生で何らかの影響があったかどうかを纏めれば面白い話になるかもしれないと思っていた。別の理由は、そこまで悪気がないとは言えないものだ。他人に自分の子供の面倒を見てもらうことに関して思い悩む人が、世の中には常にいるものだった。その無くなることのない不安は、自分の息子や娘の安全についてである。とりわけ、インターネット上で掲載されている、デイケアに関係する様々な悲劇についての恐怖譚は、そんな不安を掻き立てた。

記事を作るため、従業員だけでなく、子供の頃にデイケアに通っていた人にもインタビューを行うことにした。あまりにも偏った内容に見えないように、できるだけ多くの異なる視点が必要だった。もちろん、取材相手のプライバシーのため、実名を使わないと合意をとった。

最初のインタビュー対象は中年の女性であり、デイケアで幼児の面倒を見ていた。プライバシーのため、女性の名は「マーガレット」とする。

「デイケアでのお仕事はどのような感じでしたか」

「うーん、そんな大したことは無かったですよ。ただ子供を相手に普通に仕事をするだけの毎日でした。私の場合は赤ちゃんですけどね」

「なるほど、そこでの仕事で何か問題はありましたか」

マーガレットは首を横に振った。

「赤ちゃんの件で? もちろん、ありませんよ。騒ぐこともありますけど、悩みの種なんてことは全然ありませんでした。子供となるとまた別の話ですけど」

興味をそそる発言だった。ハッピー・サン・デイケアに通っていた子供たちは、従業員が対処するにはあまりにも人数が多かったのだろうか。それとも、これまで隠されてきた虐待事件があったのか。調べてみなければならない。

「それはまたどうしてですか」

「えっとですね」

マーガレットは一瞬、思案した。私に話すことに不安があるかのようだった。

「くぐもった悲鳴を聞いたことが何回かあったんですよ。あ、いえ、悲鳴ではないです。絶叫ですね。最初、子供が怖がっているふりをしているだけかと思っていました。でも、聞けば聞くほど、あの絶叫は真似ではないことに気付きました。何かが子供たちを怖がらせていたんです。ケガをさせていたのかもしれません」

「負傷した子供を見たことがあるのですか」

マーガレットは頷いた。

「はい。ほとんどは普通の擦り傷や打ち身だけでした。遊んでいるときに転んだり、友達に見せつけようとして頭をぶつけたりしたんでしょう。でも、何人かは様子がおかしいように見えました。保健室へ向かう途中で、時折、すれ違う子供を見かけました。そんなときはいつも、その子供は引っ掻かれたり、噛まれたりしていたみたいでした」

子供が引っ掻かれたり噛まれたりしていたのか。それは誰にとっても心配の種だろう。おそらく、なんらかの野生動物がデイケアの近くに棲み付いて、好奇心旺盛な子供が近づいてしまったのだ。多分、野犬が運動場に迷い込み、何も知らない哀れな子供たちが犬を撫でようとしたのだろう。

「その地域には動物がいたんですか。野犬でしょうか? アライグマ? もしかしてオポッサムの巣が?」

「違うと思います。デイケアではペットの連れ込みは禁止でした。野生動物を入れないように、夜は罠を設置していました。辺りで犬がうろついていたのかもしれません」

マーガレットは首を横に振った。

「もしかしたら、その犬が子供たちに噛みついたのでしょうね」

「いえ、犬の鳴き声を聞いただけなんです。実際に見たことはありません。時折、唸り声や遠吠えを聞いたというだけです」

なるほど、マーガレットは犬の鳴き声のようなものを聞いただけだった。何かの音を犬のものと誤認した可能性を除外できない。もしかしたら、子供が犬の真似をしただけなのに、本物と勘違いしたのかもしれない。もしかしたら、風の音を犬の唸り声だと思ったのかもしれない。もしそうだったとしても、マーガレットが見かけた引っ掻き傷や噛み跡のある子供についても説明がつくだろう。引っ掻き傷は単に、うっかり枝や柵の一部に引っ掛かっただけ、ということもあり得なくもない。犬の唸り声に聞こえた物音の件もあって、マーガレットは子供が野良犬か何かに襲われたという結論に飛びついてしまったのかもしれない。

それでも、デイケアについて調べる必要があった。犬の襲撃事件が隠蔽された可能性もあり、次にインタビューする相手はかつてデイケアに通っていた人が良いだろうと思った。もしかしたら、子供の頃の記憶が残っている人がいるかもしれない。マーガレットの証言に光を当てる記憶の持ち主がいるかもしれない。

身元確認をいくらか行った後、私はどうにか該当する人物を発見できた。その若い男性はだいたい5・6歳の頃にハッピー・サン・デイケアに行ったことがあった。ここでは「スコット」とする。スコットは地元の肉屋で働いていた。スコットのシフトが終わるまで待たなければならなかったが、その後にインタビューを開始できた。幸運にも、待ち時間は長すぎない程度で、質問を考える時間ができた。

「ハッピー・サン・デイケアについて何か覚えていることはありますか。昔のことだとは分かっています。でも、もしかしたら何か思い出せませんかね」

スコットは一瞬考えた後、口を開いた。

「あまり多くは。通っていたときは、まだ5歳、それか6歳かそこらでしたから。その齢の子供がやるようなことばかりやっていたとしか覚えていませんね。遊びとか、指絵とか、アニメ見るとか。そういう感じの」

私は頷いた。

「あなたは良い子でしたか」

「だいたいは。時々、面倒事を起こしたりもしましたけど。深刻すぎることは何も。普通の子供の癇癪ですよ。ほら、昼寝したくないとか、野菜は嫌だとか、そういう」

「なるほど」

私は返答しつつ、メモ帳にスコットの発言を書き留めた。

「それなら、デイケアは躾の仕方は適正でしたか」

「まあ、それなりに。俺は叱られたくらいですね。時々、『お休み』というのも受けました。数分間、隅っこに座らされるんです。子供たちの中に戻っても大丈夫と思われるまでそうするんですね。でも、もしそれだけしかなかったのなら、運が良い方です」

スコットの言葉には少し当惑した。運が良いとは? どう運が良いのか。もしかして、デイケアに通っていた子供たちの中で、もっと言うことを聞かなかった子はもっと厳しい罰を受けたのかもしれないと思い始めた。ハッピー・サン・デイケアの従業員たちは、もっと議論の的になるような、公には知られたくない躾の方法をとっていたのか。

知らなければならない。

「つまり、どういうことでしょうか」

一瞬、スコットは身震いした。スコットは子供時代の何かを思い出していたようだ。それが彼を怯えさせ、大人になってからも影響を与えたのかもしれない。

「マジの面倒事を起こした子供は、『灰色のドア』に送り込まれるんです」

スコットは深く溜息をついた。

「俺は行ったことはありません。何人かが行ったのを知っています。喧嘩をした奴とか、ひどい癇癪を起した奴とか。そういう子供は最終的にはあの部屋に行きました。あそこで何があったのかは分かりません。でも、みんないつも、目を見開いて震えながら出てきました。何人かは泣き出していました。絶叫した子もいました。ゲロを吐いて気絶した子も一人いました」

私は僅かに眉をひそめた。何か恐ろしいことが、「灰色のドア」と呼ばれる部屋で行われていたのか。そのとき、私はマーガレットの発言を思い出し、マーガレットの証言とスコットの証言の関係性を確認することにした。

「その子供たちには引っ掻き傷や噛み跡がありましたか。それと、変な音を聞いたことはありますか」

スコットは頷いた。

「何人かは、『灰色のドア』から出た後に、引っ掻き傷を負っていました。でも、そいつらは入る前からそういう傷があったと思うんです。最初は傷に気付いていませんでしたけど。そいつらは躓いたか何かしたのかもしれないです。激しく呼吸する音を聞いたことがあります。子供が走り回って息切れしただけかもしれないです。はっきりしたことはちょっと」

最初、マーガレットは犬の唸り声を聞いたと言った。それから、スコットは激しい呼吸の音を聞いたと言った。奇妙な音に、不品行な子供が負った謎の引っ掻き傷、そして「灰色のドア」の部屋の謎。ハッピー・サン・デイケアがここ数年の間に隠してきたものは一体何なのだろうと考えずにはいられなかった。

私はスコットに話す時間をとってくれた礼を言い、次のインタビュー対象の元へ向かった。「灰色のドア」に対する関心は依然として高く、私は次の相手はデイケアで厄介事を起こしていた子供だった人にすべきだと思った。例の部屋の中で何が行われていたのかもっと知る必要があった。もしかしたら、そのような人々のうちの誰かが教えてくれるかもしれない。

身元確認をさらに進めた後、どうにか該当する人物を探し出せた。その若い女性を「アリス」とする。2週間前、アリスはスプレーでの落書きにより逮捕され、器物損壊罪で告発された。アリスは刑務所暮らしではなく、4か月間の奉仕活動の実施に合意した。アリスの前科の記録によると、法に触れる問題を起こしたのはこれが初めてではないようだ。

「いつもこんな風に問題を起こしているんですか」

アリスは肩をすくめた。

「多分ね」

求める答えを得るのにどれほど苦労するかはっきりとは分からなかった。アリスは何か利益がある場合だけ協力するタイプのようだ。例えば、獄中にいる時間を減らすというような利益が。

「ハッピー・サン・デイケアについて知る必要があるんです。『灰色のドア』について何か覚えていませんか」

一瞬、恐怖の兆候がアリスの目に浮かんだ。顔は青ざめ、数滴の汗が額を流れた。

「あ、あんなの昔の話だろ」

「絶対に何か覚えていますね。記録によると、10歳のときにデイケアに通っていたそうですね。本当に何も思い出せませんか」

アリスは数回荒く息をすると、冷静さを取り戻し始めた。単に「灰色のドア」の部屋について言及するだけで、数年前の恐怖を呼び起こせるのに十分となると、アリスが経験した恐怖について恐れを抱かずにはいられなかった。ここにいるのは法律違反を経験した人物である。様々な犯罪、主には窃盗、器物損壊、住居侵入で逮捕されたことがある人物。そして、今や、子供時代の何かが罰せられる恐怖を呼び起こした。何故?

「いいよ。教えてやる。でも、約束しろよ。私があんたに何か伝えたって絶対に言うな。分かったか」

アリスは溜息をついた。

「名前は明かしません。極秘とします」

「えっとな、私は外の運動場で遊んでいたんだ。ぶらんこで遊びたかったのを覚えている。別のガキが最初に遊ぶ約束をもうしていたらしいんだ。私は知らなかったから、酷い言い争いになった。私はキレちゃってさ。気付いたときには、あのガキは地面に横たわって泣いていた。きっと、喧嘩していたときにあいつを突き飛ばしたんだな。先公が一人来て、私の腕を掴んで、建物の中に引っ張っていった。先公は、他の子たちが『灰色のドア』の部屋と呼ぶ所に、罰として放り込むって言ってきた」

「部屋の中はどうでしたか」

私は先んじて質問した。

アリスは再度、荒く息をすると、身震いし、溜息をこぼした。

「部屋はほとんど空っぽだった。床が無くて土の地面だったことを覚えている。明かりも薄汚れた古い電球しかなくて、ほとんど切れかけだった。先公は私を押し込んで、ドアをバタンと閉めた。最初、私はドアをドンドン叩いたり、叫んだりしようとしていた。誰か開けろと喚いた。凄く暗くて寒くて、それで凄く怖かった。それで、な、何か物音がしたんだ。何かが背後にいた。振り向いたとき、絶叫したのを覚えている。こんな大声で叫ぶのは生まれて初めてってくらいに」

私は心配で眉をひそめた。

「何を見たんですか」

「犬だよ。いや、とにかく、私は犬だと思った」

アリスは涙を抑えた。

「暗くてよく見えなかった。覚えているのは、今まで見た中で、一番デカくてキショい犬だったってことだけだ。そいつは黄色い目が輝いていて、デカくて尖った歯があって、黒いモジャモジャの毛だらけだった。それで、私がそいつに気付く前に、そいつは私に唸って突っ込んできた。なるべく速く逃げ回ったよ。誰か来て助けてくれって叫んだ。そいつはスカートに噛みついて、私を引きずろうとした。私は躓いて倒れたけど、どうにか奴の顔を何度か蹴って、スカートを離させたんだ。すると、そいつはまた突っ込んできた。でも、私は運が良かった。やっとドアが開いたんだ。先公の一人が私を部屋から引っ張り出して、あの犬が追い付かないうちにドアをバタンと閉めたんだ」

つまり、結局のところ、そこには犬がいた。証言は全て一つに繋がろうとしていた。マーガレットによる、絶叫や唸り声を聞いたという証言。スコットによる、「灰色のドア」の部屋に送り込まれて恐怖する子供たちについての証言。そして今、アリスによる、件の部屋に送り込まれて、大きく危険な犬の類に襲われたという証言。それでも、更なる情報が必要だ。どうして犬が使用されたのか。どうしてそれが隠蔽されたのか。もしかしたら、ハッピー・サン・デイケアで働いていた人は、そのような罰を子供に施すのは極端すぎると恐れていたためかもしれない。それか、動物権利団体から訴えられることを恐れていたためかもしれない。

私はアリスに時間をとってくれた例を言い、次に話すべき人を見つけに出発した。多分、別の従業員が良いだろう。運が良ければ、「灰色のドア」の部屋の中で行われていたことについての真実を明かすことができるかもしれない。もう一度、ハッピー・サン・デイケアで働いたことのある人の記録を辿り始めた。

私と話すことを厭わない人を探すのにいくらか時間を要した。元従業員のほとんどは、多忙で都合がつかないか、単にインタビューを受けたがらなかった。そのうちの数名は私に向けて暴言まで吐き捨てた。私が過去に起きたことを調査していることに、その元従業員たちは怒っているのか、それとも、更なる秘密が明かされると起こりかねない何かを恐れているのかも、判別がつかなかった。

それでも、私はどうにか一人は見つけ出すことができた。ハッピー・サン・デイケアで働いていたときの体験を私に話してもいいという人物だ。彼を「スミス氏」と呼ぶことにする。スミス氏はデイケアがまだ営業していた頃に、デイケアの裏手で管理人の仕事をしていた。スミス氏がどうにかこの職に就けたのは、彼のおばがデイケアの運営者の一人だったというだけの理由だった。しかし、スミス氏はデイケアが数年前に廃業してから、別の町に移住していた。つまり、対面でインタビューすることはできないということだ。そのため、代わりに電子メールでやりとりをした。

スミス氏は、自分は10代のときからある種のナルコレプシーを患っており、夢遊病の病歴もあると説明した。医師たちはスミス氏の症状の原因を解明できなかったが、それと関係する他の健康への悪影響も見つけられなかった。この病気が原因で、スミス氏は仕事を見つけるのが難しかった。おばがどうにかしてハッピー・サン・デイケアでの仕事を与えてくれて感謝していたと、スミス氏は述べた。

私は聞きたいことが沢山あった。ただ、最初にどれを質問すべきか、確信が持てなかった。最初の返答を受信した後、私は返事を書いた。病気を患っているにも関わらず、どのようにして仕事を続けられたのか知りたかった。薬物治療を受けていたのか。他の従業員や子供たちはスミス氏をどう扱っていただろうか。

数日後に返事が来た。スミス氏から来た最新のメールをすぐに開いて、読み始めた。スミス氏の返答によると、彼のおばが特別な薬草のお茶を調合してくれるそうで、そのお茶のおかげでナルコレプシーを抑制していたという。おばは薬草のお茶の効能を固く信じていたようで、市場に出回るどの標準的な薬よりもよく効くと言っていたそうだ。スミス氏は、そのお茶はひどく苦く、そのお茶を飲むのが大嫌いだったが、それでも仕事を続けたかったから飲まなければいけなかったと述べていた。ただ、時折、おばがお茶に必要な葉を切らしてしまい、スミス氏が眠りに落ちてしまうことがあった。このため、別の従業員が、スミス氏がうっかり自分や他者に怪我をさせることがないように、確認に行っていた。

ハッピー・サン・デイケアで、子供たちを襲った、「犬」とされるもの。

自分がどのような扱いだったかという点について、スミス氏の説明によると、子供たちは概してとても親切だったという。子供たちのほとんどは非常に好奇心旺盛で、スミス氏が働いている間に数多くの質問をしてきたものだった。数名は迷惑なことをしていたが、スミス氏にはそのうちの誰かが酷く問題を起こしていたというような記憶は無かった。他方で、他の従業員たちはスミス氏の周囲にいるとき、不安そうにしていた。他の従業員たちは周囲にいるとき、極度に用心深くしているようだったという。また、おばはいつも自分を見張っていたとスミス氏は述べた。ただ、これは自分の体調のためか、他に何らかの理由があったのか、スミス氏にははっきりとは分からなかった。

スミス氏の証言により、心の中でさらに疑問が生じた。どうして他の従業員たちはスミス氏の周囲で不安を覚えていたのか。スミス氏が上層部の人間の甥だったためか。それとも、他に理由があったのか。また、おばがスミス氏を見張っていたという件もある。多分、「灰色のドア」の部屋に関する問題全体を、スミス氏から秘密にしようとしていたのだろう。もしかしたら、スミス氏が例の犬を見つけて警察に通報することを恐れていたのかもしれない。

スミス氏があの部屋について何か知っているか知る必要があった。すぐに返信を書き、大きな空っぽの部屋のこと、子供たちが犬の類に襲われていたことについて何か知っているか質問した。

数日後、スミス氏から返答があった。返信を開いて読み始めた。

スミス氏は、デイケアに犬の類がいたという記憶は無いという。実のところ、動物を敷地に入れるのは禁止されており、リスやネズミが入ってこないように罠を自分が仕掛けていたとスミス氏は語った。スミス氏のおばもかなり厳しくペットの持ち込みを禁止していた。どうやら、子供がアレルギーを持っていた可能性があったためらしい。スミス氏は、アリスが自分を襲ったと主張している犬は、おそらく誰かが安っぽい犬の着ぐるみを着ていただけだろうと説明した。部屋がほとんど真っ暗だったのは、子供に犬が偽物であると悟らせないようにするためだろうとも述べた。引っ掻き傷や噛み跡はただ躓いたり、うっかり自分を引っ掻いたりしてできたものだろうとも語った。

驚いたことに、スミス氏自身も何度か「灰色のドア」の部屋に行ったことがあった。奇妙なことに、それはいつもお茶を切らしていたときだったという。部屋の中で目を覚ましていた。誰かが自分をそこに運んで、他人の邪魔にならないように眠れるようにしたのか、それとも、夢遊病が再発して誤って部屋に立ち入ってしまったのかははっきりとは分からなかった。部屋は本来、図画工作関係の様々な備品を保管するための大きな物置になる予定だったが、予算削減が原因で完成しなかったのだという。おばはその場所が無駄になることを望んでいなかったらしく、そのため、不品行な子供を罰するための用途に使用することが決定されたのだという。おそらく、誰かが犬の着ぐるみを買って、部屋に送り込んだ子供を怖がらせるために着ていたのだろうと、スミス氏は推測していた。罰せられる恐怖を教え込ませるための手段ということだ。

私は最後のメールに、返信に時間をとってくれたことへの感謝の言葉を記した。ハッピー・サン・デイケアにまつわるあらゆることが繋がり始めた。元児童と従業員の双方との様々なインタビューから集めた情報から、不品行な振舞いをした子供たちが「灰色のドア」の部屋と呼ばれる大きな空っぽの空間に送り込まれる。そこには犬、もしくは、犬の着ぐるみを身につけた何者かがいて、部屋に送り込まれた子供を追い回す。最後に、犬が重大な傷害をもたらさないうちに、子供を安全な場所に引き込む。

為すべきことが一つだけ残っている。ハッピー・サン・デイケアの中に入り、自分自身でかの悪名高き「灰色のドア」の部屋を調べるのだ。この奇妙な隠された謎を解く何かがあるのか、自分自身で確かめる必要があった。

数分かけて、車でその地方へと向かい、件の廃屋へ辿り着いた。前の道で車を停め、深呼吸を数回行った。玄関が施錠されていなかったのは幸運だった。静かにドアを押し開き、中を見始めた。

内部は薄汚れており、埃が積もっていた。様々な机や椅子が長い間使われずに放置され、クモの巣がかかっていた。黴臭い空気が建物の中を充満し、今やこの場所を住処としていたネズミたちの排泄物の臭気も漂っていた。控え目に言っても、吐き気を催す状況だった。

様々な場所を探索した後、すぐに嫌な予感を覚えさせる灰色のドアを見つけた。非常に恐ろしい部屋へと通じるとされるあのドアだ。ドアは非常に重く、何度か試してようやくこじ開けることができた。

アリスが説明した通り、部屋は暗く空っぽで、床は土の地面が剥き出しで、薄汚れた電球があった。電球は昔に切れてしまっていた。そのため、古い机を重しにしてドアを開きっぱなしにして、内部が見えるようにした。

地面や壁には微かに血痕が見えた。しかし、何の血かは区別がつかなかった。また、壁には奇妙な痕跡が残されていた。よく見てみたところ、間違いなくある種の爪痕と似ていることが分かった。部屋の調査を続けたところ、地面に様々な足跡があることに気付いた。多くは消えかけていたり、別の足跡と重なったりしていた。しかし、それでもいくつかは判別がついた。ほとんどは子供の足跡だった。この足跡の持ち主は何かから逃げていたように見える。

他に特異的な足跡があり、私の関心を引いた。厳重に調査をした。足跡のうちの少なくとも一つは、特異的な肉球、爪、足指の1本1本が間違いなく判別できた。これは安っぽい着ぐるみなどではない。ハッピー・サン・デイケアは犬を使って子供たちを脅していたのだ。

連中が隠蔽してきたことを人々に知らせなければならない。しかし、デイケアを出て車へ戻る途中、あの足跡に関して不安を呼び起こす点が一つあった。

いつから犬は二本足で歩くようになったんだ?

2024年9月12日木曜日

Creepypasta私家訳『セオドアくんへ』(原題“Dear Theodore”)

ベッドの下の写真

"Beds" by Didriks is licensed under CC BY 2.0.

作品紹介

お節介な恐ろしいモンスターについてのお話です。Creepypasta Wikiでは“Suggested Reading”に選出されており、評価が高いです。

作品情報
原作
Dear Theodore (Creepypasta Wiki、oldid=1511170)
原著者
SpiritVoices
翻訳
閉途 (Tojito)
ライセンス
CC BY-SA 4.0

セオドアくんへ

セオドアくんへ

僕は君のベッドの下に隠れているモンスターです。僕としては、「モンスター」なんて言い方はちょっとキツいと思うけれど、君は僕のことをそう呼んでいるよね。だから、僕もそう名乗ることにするよ。

実を言うと、君以外には多くの名前で呼ばれているんだ。「夜を彷徨う者」というのがそうだね。「影男」というのもそうだ。そんなつもりもないのに、うっかり伝説になってしまったことも何回かあったみたいでね。ビッグフットは僕が森の中を散歩していたときの姿かもしれないと聞いて、君は信じるかな。本当は、姿を見た人次第で決まるから、人によって違うものを想像する可能性がある。今のところ、僕は君の想像したものが一番好きだね。

僕がこれを書いているとき、君は6歳だね。6年間ずっと、僕は君のベッドの下にいた。僕は新生児集中治療室から君についてきたんだ。病院から家に向かうまでの道すがら、僕は君の泣き声を聞いていた。正直に言えば、ベビーベッドは自分の体を圧し潰して下に潜るのが大変だったよ。でも、頑張ったんだ。男の子向けベッドに移ってくれたのはありがたかった。君の背後に潜むのが大分楽になったんだ。

君は成長するにつれて、家を出ることが多くなった。君が帰ってきて、無知な両親の前で、学んできたことについて興奮しながら取り留めもなく喋り出したとき、僕はやっと思い出したよ。子供というものは学校に行くものだということをね。トーマス夫人は君の話を聞いて楽しそうにしていた。僕も奥さんに賛成だな、今のところは。

君が人について話すと、誰でも素敵な人のように思える。君は人の一番良いところを見ようとするからね。そんな資質に僕は希望を貰った。この世界には、君のように無限に楽観的な人がもっと必要だ。そのことは、デカくて恐ろしい夜のモンスターのことを引き合いに出してもいい。実のところ、君は僕にさえ良いところ見つけようとしている。月が影と光を混ぜ合わせた悍ましいものを君の部屋に差し込ませ、僕がまさに存在するという恐怖で君が身を震わせるとき、君の囁き声が耳に入る。

「僕、怖いよ。君も怖い?」

君が誰に話しかけているか気付いていないのは明らかだ。君にとって、僕は名も無い生き物以外の何者でもない。狙いや目的も無く、ただ定まっていない悪意があるだけの生き物だ。君は僕が辺りにいるときに万が一にも眠ってしまったら、僕が何をやらかすかもしれないか分かっていないみたいだ。昼間、君は僕から離れていて安全だと思っている。影が単に消えているだけとは思わないのかな。僕は君を傷つけたいと望めば、やってのけるよ。

君は4歳のとき、僕の絵を描いたことがある。あのしわくちゃの紙は、しまいには僕のいるベッドの下に行った。君は僕の真の姿を見たことがなかったし、君の芸術の腕前は控え目に言っても未発達だった。だから、当たり前だけど、いくつか間違っているところがあった。君の絵は灰色で描かれたデタラメな落書きだった。尖った歯があって、角が生えていて、数えきれないほどの無数の鉤爪がある。吐き気を催すような悪魔じみたヤマアラシのような感じだった。僕はこの絵を見たとき、つい面白く思ってしまった。君は完全に間違っているとは言わないよ。

僕がこんなことを書いているのは、君が僕について何もわかっていないことを知っているからだろう。でも、僕は君のことをとっても、とっても知っているよ。実のところ、君が自分のことを知っている以上に、僕は君のことを理解していると思う。

君が野菜が嫌いなことを僕は知っているし、果物が目の前に置かれれば、どんな果物でも食べてしまうことも知っている。君のお気に入りのリーシーズ・パフのシリアルを僕は知っているし、君は滅多にそのシリアルを食べられないことも知っている。君は汚い言葉を一つだけ知っているけれど、口に出して言う勇気は無いことを僕は知っている。君が消防士になりたいことを僕は知っているし、2か月前は建設現場の仕事をしてみたいと思っていたことも知っている。君がどちらにもならないことも知っている。君の友達全員の名前を僕は知っている。どの友達が君をいつか裏切ることになるかも知っている。君に最初にできるガールフレンドの名前を僕は知っているし、2番目のガールフレンドの名前も知っている。君の最初で最後のボーイフレンドのことも知っている。君が両親を愛していることを僕は知っているし、両親が君のことを傷つけることさえも知っている。君が何歳で死ぬかも僕は知っている。

君の死を防ぐ方法も知っている。

僕は沢山のことを知っているけれど、この手紙が君の元に届くかははっきりとは分からない。実のところ、君がこの手紙を読むことになるかもはっきりとは分からない。君がもっと成長したとき、僕がやろうと企てていることを理解して、僕の判断に賛成してくれると確信できたらいいのに。でも、本当のことを言えば、君がいつかそうしてくれるかも分からないんだ。

ただ一つ、100%明らかなことは、僕が奴らにやることに後悔しないということだけ。奴らは然るべき罰を受けることになる。なぜならば。夜、窓のところの木の枝が巨人の鉤爪のように見え、暗闇が迫ってくるように見える時間。君が本当に恐れているものは僕ではないと知っているからだ。奥深く、君の心が今なお辿り着けない場所で、君は両親を恐れている。

「僕、怖いよ。君も怖いの?」

君が尋ねたのは僕がたてた物音のことではなく、奴らのことだ。奴らは喧嘩をして、野性動物のように唸る。決して終わるのことのない、無視と怒りの竜巻。君は教室がもたらす仮初の避難所にいて不在のとき、両親がどのように振舞っているかを知らない。君にはまだ奴らがもたらすであろう苦痛がいかほどかを推測できない。君が成長して、甘やかせなくなったことに気付いたそのとき。君が成長して、自分たちが互いにやっているのと同じような扱いを、君にもできるようになったと気付いたそのとき。奴らは君に苦痛を与える。

君は奴らがいなくても上手くやっていけるだろう。縁が切れた方が遥かに素敵だと保証する。しばらくのうちは辛いだろうが、君はまだこんなにも若い。痛みは次第に消えていくだろうし、そのうちに解放される。奴らがもたらす混乱や自滅、虐待から逃れることで、君は自分が望む人生を生きていられるし、引き留める者は誰もいない。

いつか、この手紙を読めば、僕がどうして奴らを君から引き離したかを理解するだろう。そうしたら、君が僕に感謝してくれるといいな。両親の血の悪夢が、徐々に背景に聞こえるハミングの中へ消えていって、君がぎゅっと抱きしめている無尽蔵の楽観に置き換わるといいな。

それで、そんな日が来たら、僕が奴らよりも君のことを大事にしていたことに気付いてくれるといいな。

永遠に君のもの

君のベッドの下に今もいるモンスターより

2024年9月8日日曜日

シャニアニ2ndに水を差す

画像は『アイドルマスターシャイニーカラーズ 2nd season』の「第2章」より引用 (取得。©Bandai Namco Entertainment Inc.)

現在、『アイドルマスターシャイニーカラーズ 2nd season』第2章が全国の劇場で先行上映中。第3章の公開も間近です。 私自身はシャニアニ1期をネット配信で、2期第1・2章を映画館で鑑賞しました。

シャニアニ2期の自分なりの感想を書いておきます。題名の通り、全面的に肯定しているわけではありません。ネタバレも含みます。

まずは1期を蒸し返す

2期の話をするのであれば、まずは1期の話を踏まえる必要があるでしょう。 シャニアニ1期は世間一般からの評価が低い作品でした。アニメで初めてシャニマスに触れた人だけでなく、元からシャニマスが好きだった人からも酷評されました。 私自身も、とてもではないが食えたものではないというのが正直な感想です。

直接的な言葉に頼らずに、表情や天候などを使って、空気感を通じて登場人物の心情を伝えたいという意図は伝わります。 ドキュメンタリー風味の演出を取り入れるなど、何か奇抜なことを実現したかったのだろうとも思います。 シャニマスファンは考察が大好物という方が多いです。 製作側は、そのようなファンが映画から何かを読み取って、様々に話題を広げることを期待していたのでしょうか。

ただ、あまりにもシナリオの内容が平板で、当たり障りが無さすぎです。 考察愛好家たちも、さすがにW.I.N.G.敗北程度しか話題性のある出来事がない筋書きに対して、議論できることなどはほとんどありません。 ドキュメンタリー風味の演出も、ストーリー自体が薄味となれば、その味をさらに希薄にするだけの効果しかありません。

1期の惨状を目の当たりにしたとき、私は駄作ではあるが同情の余地もあるかもしれないと思っていました。 ソーシャルゲームをアニメ化するとなると、登場人物にそれぞれファンが付いているわけで、全員を主役にしたいところです。 しかし、桃太郎役が16人もいて、まともな劇ができるわけもありません。 出番も極力平等に与えようとすれば、16人分の顔のカットを毎度挟むということにもなるでしょう。 真乃の変化や成長が物語の縦軸に置かれており、真乃の出番は他の登場人物よりも多かったです。別格の扱いと言っていいでしょう。 ただ、真乃の心情を空気感で語らせようとした影響もあってか、真乃の印象はそこまで強くは残りません。 真乃は特別扱いしつつも、16人をなるべく平等に扱おうとする意図があるように私には見えました。

ただ、2期を見てからは、1期で製作側が何をしたかったのか、もはや何も理解できなくなってしまいました。

1期は原作のシナリオをほとんど含みません。『Light up the illumination』の要素が部分的に含まれるというだけです。 一方で、2期は原作のシナリオを再編してアニメ化した回が複数存在します。 2期の第2話は『Straylight.run()』、第5話は『天塵』、第7話はアンティーカのファン感謝祭編、第8話は『薄桃色にこんがらがって』が原作です。 これらの原作のエピソードは本来は独立しています。今のところ、2期はライブや真乃の成長を縦軸として、原作由来の物語を繋ぎ合わせています。 第3章もおそらくはそのような内容になると予想されます。

1期の登場人物間の平等志向は、2期では崩壊します。 第7話は咲耶が、第8話は千雪が中心となるエピソードです。ほぼ主役と言ってもいいでしょう。 主役扱いされる登場人物がいると言っても、他の登場人物に出番がないわけではありません。 第7話は結華、摩美々、恋鐘にも大きな見せ場があります。第8話は甘奈も準主役程度の役割はあります。 しかし、第7話は霧子がかなり影が薄いです。第8話は甜花が目立ちにくい立ち位置でした。

登場人物に平等に出番を与えた1期と比べれば、格段に面白いシナリオになっているとは思います。 平等に16人の顔を映そうとすれば、まともな話を作ることができるわけがありません。 ただ、2期で平等を崩してしまうのであれば、1期の時点から2期のような展開にしてしまえばよかったのです。

1期のときから「シャニマス傑作選」とでも題して、原作で評判の良かったエピソードを映像化すれば、皆満足したのではないでしょうか。 1期では出番が少ないエピソードが選ばれたとしても、2期で挽回できるわけです。 『十五夜「おもちをつこう」』や『流れ星が消えるまでのジャーニー』などを映像化すれば、今回は扱いの悪かった子も挽回できたのではありませんか。

1期と2期は製作時期があまり離れていません。1期の評判が悪かったから、2期では手管を変えよう、などと判断する暇は無かったはずです。 結局のところ、1期は一体、何だったのでしょうか。

2期第1章も蒸し返す

前述の通り、2期の第2話は原作の『Straylight.run()』が下地になっています。しかし、元のシナリオからは大幅な変更も加えられています。 その変更点があまり良いとは思えません。

原作は海辺のアイドルイベントが舞台でした。八百長に対抗しようとしたあさひが、直前に出演したアイドルのパフォーマンスを完璧な精度で模倣するという展開です。 一方で、アニメ第2話は、海辺のイベントではなく、室内でのオーディションという設定に変わっていました。 これが原因で、あさひがアイドルのパフォーマンスを模倣するという展開にかなり無理が出ています。 視聴者からしても、元のシナリオの知識が無いと、この展開の意味が分かりにくいのではないでしょうか。

第2話での設定変更の理由はいくつか考えられます。まず、テレビでの放映時期が秋であるという点。 秋に海辺のイベントの話を流すのは不自然という製作側の配慮でしょう。 ストレイライトの水着の3Dモデルを作る手間も省けます。 オーディションという設定に変更すれば、競争相手のアイドルの3Dモデルが無くても、さほど不自然ではありません。 シナリオの別の部分を不自然にすることを許容できるのであれば。

また、第3話は第4話でのライブの準備の話ですが、こちらにも問題があります。 シナリオがそこまで面白くない点は置いておくとして、こちらも展開が不自然です。

アイドルがライブの演出などを考えるというのは、原作のファン感謝祭編などのシナリオにもありました。 ただ、あまりにも演出に関与しすぎです。 せいぜい演出の案を出す程度が現実的なところで、アイドル本人が資材を仕入れに行ったりするのはさすがに異常です。DIYにも程があります。 果穂のリアクションは可愛かったですが、長所はそれくらいです。

ライブ前のアイドルの様子を現実的に描き出すとなると、ひたすらパフォーマンスを練習するだけで終わるでしょう。 それでは絵にはならないという事情も推察できます。 ただ、それはライブ前のアイドルの描写など、最初からしなければいいというだけの話です。 そもそも、ライブを1話丸ごと使って描写する必要性もありません。 ライブの描写はオープニングかエンディングにでもあれば十分で、新曲もそこで流せばいいでしょう。

結局のところ、徹頭徹尾「シャニマス傑作選」にすれば、皆が満足できたのではないか、という話に落ち着きます。 『Straylight.run()』は原作通りに海辺のイベントにすればいい。ハロウィンライブは必要ありません。秋に夏の話を放映して、一体何の問題があるのでしょうか。 本来は独立した原作のエピソードを、ライブを通じて繋ぎ合わせようとしていると前述しましたが、 ライブ絡みの話はシナリオの縦軸としての機能を果たしていないように思います。 評価が高い第2章も、単に原作のシナリオの完成度が高かったというだけで、ライブ関係の話は単なるフレーバーにしかなっていません。

海へ出すつもりはあったのか

第2章はファンからの評価が高いですが、第6話は賛否両論といったところです。 この第6話がかなりの問題児ですが、まずは第7・8話について言及します。

前述の通り、第7・8話は原作のシナリオを再編したものです。 咲耶の幼少期などの補完などもありますが、基本的には原作のシナリオを削ったものと見ていいでしょう。 映画を見たシャニマスファンは、原作の長いストーリーをよくぞアニメ1話にまとめたものだと評して太鼓判を押しています。 ただ、そもそも1話にまとめる必要があったのでしょうか。原作が素晴らしいからこそ、もっと丁寧に扱ってもよかったのではありませんか。 1話だけなどと言わずに、2話分の時間を割いて伸び伸びと描写してもいいわけです。せめて1.5話分程度はあってもいいと思います。

原作のアンティーカのファン感謝祭編は、事務所での忙しい日常を最後にもう一度描写します。 しかし、アニメ第7話ではその部分は削られてしまいました。このパートは咲耶の感情の変化が端的に現れます。 映像化する機会は、もう二度と来ないかもしれません。

アニメ第8話も原作の『薄桃色にこんがらがって』からかなり削っています。 アプリコット編集部が甘奈を選んだ理由を説明する場面がかなり短縮されていますが、そこは重要な部分だったと思います。 アプリコット編集部が単なる悪役ではないことを明示するか否かで、物語に対する印象はかなり変わるはずです。 アニメでも触れてはいますが、知識の無い視聴者にあの描写だけでそれを読み取らせるのは無理があるでしょう。 また、『薄桃色にこんがらがって』はイベント配布sSSR【ドゥワッチャラブ!】が単なるおまけでは終わりません。 千雪の努力が報われるだけでなく、アイドルとしての世俗的な成功だけでは終わらないものを、アルストロメリアが築き上げたことを示唆する内容です。 1話だけでなく、2話分の時間をとれば、【ドゥワッチャラブ!】の内容に触れる時間もあったのではないでしょうか。

ここまで非難を重ねましたが、第7・8話は普通に面白くはあります。 原作の傑作エピソードをアニメ1話分にねじ込むという勿体ないことをしているだけです。省略や多少の改変はあっても、本質を損ねているわけではありません。 ただ、第5話は本質すら留めていません。

第5話は原作の『天塵』の前半部を下地にしています。第7・8話と同じ問題が、同様に第5話にも見られます。 原作のシナリオをアニメ1話に収めようとして、駆け足気味に話が進んでいきます。明らかに尺が足りていません。 ノクチルの原作のシナリオは、間が多かったり、起伏の乏しい話が長々と続いたりと、静謐な印象を与える場面が多いです。 最後にノクチルのメンバー (特に透) が奇抜なことをして、何もかも転覆させてしまうものだから、退屈な印象は残りづらいです。 しかし、ビジュアルノベルでは受け入れられても、アニメに向いている表現手法とは思えません。 アニメで原作の空気感まで再現しようとすれば、1期の二の舞ではないかと心配していたのですが、結果的には杞憂でした。

問題はシナリオの変更点です。第5話は、ノクチルの4人が初出演のテレビ番組を崩壊させますが、海には行かずに終わります。 その後の第6話で、ノクチルが透の決断に促されて、全国ツアーへの参加を決めます。 話の流れから察するに、海には行くことがなく、最終話辺りで披露するであろうライブがその代わりになると予想されます。 秋に海に飛び込んでしまったら、小糸ちゃんが風邪をひきかねないという製作側の配慮のためでしょうか。 観客の振るペンライトが青白く光り、それが海のように見えたというような展開が、代わりに収まるのかもしれません。 夜光虫たちが海に行かずに話が終わるというだけでも問題ですが、アニメは『天塵』のテーマすらも毀損している可能性が高いです。

原作の『天塵』は、ノクチルの4人の破壊的な衝動は自己満足に終わり、観客は誰も評価してくれず、それでも4人は煌めいていた、というような話です。 アニメでは海に行く可能性はほぼ無く、283プロの合同ツアーでノクチルがアウェイになるとも思われません。 まさか、原作のLanding Pointやマッチライブのように、観客からバッシングを受けるなんてことも無いでしょう。 仮に観客から露骨に嫌われているという描写があったとしても、かなり不自然な展開になると思われます。 『天塵』の儚い味わいは、アニメ化に際して儚くも霧散してしまったようです。前半部のシナリオだけが宙ぶらりんに残ってしまったように思います。

これだけでも十分に問題があるのですが、透に対して真乃の介入があったという点も厳しいものがあります。 ノクチルは幼馴染で結成されたユニットであり、固い絆とそれに伴う閉鎖性が特徴です。 メンバーそれぞれにノクチルとは無関係の交友関係が全く無いというわけではありませんが、ユニットのことともなると、プロデューサーですら踏み込めない聖域があります。 そうでなければ、『ワールプールフールガールズ』のシナリオは成立しません。解散の件も、事前にプロデューサーに確認をとっておけば済む話です。 しかし、アニメ第6話では、その禁忌は真乃にあっさりと蹂躙されてしまいました。 真乃の言葉に刺激を受けた透、透の言葉をきっかけに奮起した幼馴染3人、といった具合に、真乃が結果的にはノクチル全体の方向性を決定付けてしまっています。

真乃と透の関係性は、原作では『アジェンダ283』や【裏声であいつら】などで断片的に描かれています。 ただ、真乃の存在が透に影響を及ぼすという描写に説得力があるとは思えません。そこまでの関係性が描かれたことは無いはずです。 アニメのシナリオにおいて、真乃は一応は別格の扱いを受けています。 しかし、1期の描写の曖昧さや展開の平板さもあって、アニメの描写から真乃に透を動かすだけの力があると読み取るのも難しいと思われます。

繰り返すようですが、「シャニマス傑作選」を徹底すれば無難だったのではないでしょうか。 真乃の成長やライブを物語の縦軸に据えようとして、原作由来のエピソードに歪みをもたらしているように思います。

実を言えば、私はノクチルのイベントコミュは全般的に好きではありません。『天塵』も本音を言えば、あまり興味はありません。 それでも、『天塵』の改悪があまり話題にならないことに違和感を覚えています。 ノクチルファンではない私ですら気になった箇所を、ノクチルファンはどうとも思っていないのでしょうか。不思議でなりません。

結局のところ

ここまで文句を書き連ねてきましたが、私のような一ファンがご意見を表明をしたところで、何か意味があるわけではありません。 アニメ1・2期は既に完成済みで、私が批判すれば、高山Pが襟を正してアニメを作り直してくれるわけではありません。 そもそも、アイドル一人一人がバンダイナムコの財産であるわけで、私が自由にできるものは何一つありません。 私のような一消費者にできることは、コンテンツに金を出すか、時間を割くかを決めることだけです。

それにもかかわらず、どうしてこんな罵詈雑言をつらつらと書き連ねたのか。 シャニアニ2期第2章に対するシャニマスファンの態度が、何となく気に入らなかったから、ですかね。

よくよく考えてみれば、私自身がシャニマスに求めていることは小糸が可愛いこと程度。ノクチルも、シャニマスも、それ自体はどうでもいいのかもしれません。 そのような意味では、今回のシャニアニ2期第2章は成功だったと言えるでしょう。小糸は健気で可愛かったですよ。

2024年8月28日水曜日

福丸小糸のフィギュアについて考察する

小糸のフィギュアやぬいぐるみなど

左は「福丸小糸 ミッドナイトモンスターver.」。右手前は「【はれのひ喫茶店】福丸小糸」。右奥はもちWhat!というシリーズのぬいぐるみ。

福丸小糸とは、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』シリーズに登場する架空のアイドルである。 高校1年生であるが、小中学生と見紛うかのような幼く愛らしい外見をしている。性格はかなりの臆病者であり、他者にはあまり心を開かない。 現在、二つのフィギュアがリリースされている。

一つは「福丸小糸 ミッドナイトモンスターver.」。 「ミッドナイトモンスター」とはゲーム内で登場する衣装であり、ハロウィンの怪物をモチーフとしているが、どちらかと言えば改造メイド服、改造セーラー服といった趣である。 2024年8月現在、このフィギュアを正規の方法で入手するのは難しい。

品名
福丸小糸 ミッドナイトモンスターver.
メーカ
Solarain
原型制作
大麦幼稚園 小麦組
彩色
販売
グッドスマイルカンパニー

次に発売されたのは「【はれのひ喫茶店】福丸小糸」。 【はれのひ喫茶店】とはゲーム内で登場するカードの題名である。 衣装自体の名前は「ミニヨンプチランジュ」であり、【はれのひ喫茶店】に付属する。 首を左右に動かすことができ、表情が3種類用意されている。 下の空色の台座も付属する。 2024年8月現在、Amazonでは2万円前後で購入できる。 あまり認めたくはないが、値崩れを起こしている。

【はれのひ喫茶店】の絵

「【はれのひ喫茶店】福丸小糸」の元となった絵。『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(©Bandai Namco Entertainment Inc.) より引用。

品名
【はれのひ喫茶店】福丸小糸
原型制作
魔王
彩色
namoji
販売
ウェーブ

どちらも定価は2万円を超える。 小糸ファンであれば両方とも入手しておきたいところだが、片方しか買う余裕がないという方のために、私なりに比較を試みる。

まず、完成度の比較だが、一目見たときの存在感はミッドナイトモンスターver.の方が圧倒的である。姿勢の違いもあって、ミッドナイトモンスターver.は背が高い。衣装も派手で、装飾も多く、単純に目を惹く。 【はれのひ喫茶店】は清純な印象を与えるが、それゆえに地味でもある。

これでは【はれのひ喫茶店】に良いところがないように思われるかもしれないが、決してそんなことはない。【はれのひ喫茶店】の強みは遊び。 【はれのひ喫茶店】は表情を変えることが可能である。原作の絵を再現した表情、穏やかな微笑み、得意げな笑顔の3種類から選択できる。私のおすすめは得意げな表情の方。ぴゃっとしていて可愛らしい。

ただ、この表情を変えられる機能が、実は曲者である。 前髪と顔面が取り外せるパーツなのだが、前髪部分がやや繊細で、取扱いを誤ってうっかり破損させてしまってもおかしくはない。 【はれのひ喫茶店】は値崩れを起こしているため、安いタイミングで予備を買っておくとよいだろう。

【はれのひ喫茶店】には顔面が平たい、耳が目立つという欠点がある。これは表情を変えられる機能が原因のようだ。パーツを取り外しやすくするための、構造上の制約と思われる。 このようにいくつか欠点はあるものの、表情を変えられるという点は見逃せない美点と言える。

そもそも、根本的な違いがある。衣装だ。結局のところ、どちらの衣装がより好みかという点が最重要だろう。 ミッドナイトモンスターver.は派手なコスプレのような衣装であり、王道的かつ暴力的なまでの愛らしさが魅力である。真っ当に可愛らしい。 【はれのひ喫茶店】は清らかな天使の格好であり、眺めているだけで心が洗われる……と言いたいところだが、意外と肌の露出が多い。純白で透明感の溢れる服は、よく見ると肌が透けている。

ちなみに、どちらのフィギュアも、スカートの内側も油断なく作り込まれている。 小糸はドロワーズやかぼちゃパンツを履いていそうなイメージがあるが、普通に下着らしい下着を履いている。 その辺りが重要な人はご安心ください。小糸をそういう目で見たくない人は……どうせ買わないか。

結論を言うと、私のおすすめは【はれのひ喫茶店】。 どちらも甲乙つけがたいが、ミッドナイトモンスターver.はそもそも売っていない。今となっては選択肢が無いのだ。 それでは、一体何のための比較だったのか。なんでだろう……。

2024年8月16日金曜日

シャニマスを始めてから1年が経過した話

小糸のフィギュアやぬいぐるみなど

ミッドナイトモンスターのフィギュアはれのひ喫茶店のフィギュア、もちWhat!、その他アクリルフィギュア

アイドルマスター シャイニーカラーズ』を始めてから1年が経過した。 1年の間に、リズムゲームがリリースされ、アニメも放映された。 もちWhat!はもちもちほわほわし、福丸小糸のスケールフィギュアは二つ発売された。 私自身はグレード6・7を往復したり、難易度Expertで精一杯だったりしている。

自分自身の節目ということで、シャニマスに対する雑感を記しておく。

福丸小糸について

私がこのゲームを始めたきっかけは福丸小糸である。 某所で小糸の存在を知り、そこから興味を持った。今でも最も好きなキャラクターは小糸である。 pSSR、sSSRを全て集めたのは小糸だけである。GRADの特殊敗北を達成したのも小糸だけである。

小糸に対するファンの評価としては、努力している姿に勇気を貰えるというようなものが多い。 これは客観的な事実ではなくあくまで印象の話だが、そこまで間違ってはいないのではないか。

ただ、私が小糸を気に入っている理由はむしろ逆で、小糸の弱さが素晴らしいと思っている。 親を説得するのを避けたいがあまりに、その場しのぎの危険な嘘を吐いて逃れようとする (WING編)。 練習風景の公開が嫌なのになかなか言い出せず、しまいには不満を爆発させてしまう (GRAD編)。 他者や幼馴染と比較して落ち込んだり、卑屈なことを言ったりする (【きっと色褪せるけど】、【セピア色の孤独】など)。 小糸に対して抱く感情はおそらくは共感である。私自身も弱い人間だから、小糸の弱さが好きなのだろう。

小糸に対する評価として、コミュニケーション能力などが成長しない、というものを見たことがある。 残酷なことを言うようだが、私は小糸にあまり成長してほしくないと思っている。嫌な言い方をするが、私は小糸の弱さに価値を見出している。 成長するにしてもゆっくりでいい。急に変化があれば、裏切られたような気持ちにすらなるかもしれない。

もちろん、小糸は脆弱なだけの人物ではない。全く成長しないわけでもない。 失敗を糧に学びを得るという展開が小糸のコミュの定番だ。 さすがに駄目なだけの人間の話は私も読みたくはない。嫌な後味が残るだけの物語は嫌いである。 小糸の弱さは程良い塩梅に調整されていると思う。 小糸の屈折を優しく正してくれるシャニP (≠ プレイヤー) の働きも大きい。

一方で、ノクチル全体が好きかと言えば、残念ながらそうではない。好きになる努力はしたが、結果はついてこなかった。 むしろ、樋口円香は嫌いになってしまった。

水着を着た小糸

実は、小糸のビジュアルも好きである。ただ、その辺りの話はどう頑張ってもアレな方面に行ってしまうため、深くは触れない。 美少女ゲームなのだから、外見が好みに合うかどうかも重要である。
絵は『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』(©Bandai Namco Entertainment Inc.) より引用

他のアイドルについて

小糸以外に好きなキャラクターを挙げるとすれば、風野灯織大崎甜花だろう。 田中摩美々白瀬咲耶西城樹里も好きかもしれない。 楽曲だけで言えば、アルストロメリア斑鳩ルカも良いと思う。 コミュをもっと読むことができれば、園田智代子緋田美琴も好きになりそうな予感がある。 ただ、小糸ほど好きなキャラクターはいない。関心は数段階は落ちる。

灯織は考えすぎて空回りする話が好きである。好きな理由は小糸と似ているか。 【星合アステリズム】のようにコミカルな展開に持っていけるというのも評価が高い。 好きなコミュは、【洸】、【エバー・リメンバー・ネバー】、【混ぜ込む気持ち】。 ただ、イルミネーションスターズのメンバーが和気藹々とする話が好きというわけではないらしく、【春待ちララバイ】はしっくりこなかった。

甜花はコミカルな話が多い。気楽に読める話が多いというのはありがたい。 妹との関係からシリアスな展開に持ち込めるのも長所だと思うが、基本的には楽しい話が多いところを特に重視している。 好きなコミュは、【見果てぬ先のアヴァロン】、【BON・BON・DAY!】、【キュン!とwith us】、【甜ing Room】、【Eve】、【Pop-Up!My ♡】。 甘奈のコミュだが、【走るっ!!!!】、【おそろしいかぐ!】も良い。 やはり、面白おかしく楽しめる話が好みと言えそうだ。 ただ、幻想的な美しさも味わえる【見果てぬ先のアヴァロン】、切ない別れが見逃せない【Eve】、 「流れ星が消えるまでのジャーニー」の続編とも言える【Pop-Up!My ♡】も外せない。

摩美々はトラブルメーカーにしてムードメーカーと言える。アンティーカのコミュにスラップスティックの要素をもたらす存在だ。 当然ながら、単なる悪戯好きの厄介者ではない。悪戯ばかりするようになった背景には、摩美々なりのほろ苦い過去の経験がある。 摩美々の過去は、たとえコミカルな物語においてさえも、スパイスのように効いてシナリオに深みをもたらしているとは思う。 それでも、話を分かりやすく面白くしてくれる存在という点が一番気に入っている理由だろう。 好きなコミュは【闇鍋上等】、【パープル・ミラージュ】。

咲耶は父親絡みの話が特に面白いと思う。【幸福のリズム】、【海と太陽のプロメッサ】、【記憶が降る街】が印象深い。 【純粋・fall into a trap】は物語として面白くはあるのだが、咲耶の性格を知っていると繰り返し見たくはないコミュでもある。 実は「運命の出会いガシャ」で引いた最初のpSSRは摩美々の【アバウト-ナイト-ライト】と咲耶の【乙女と交わすTrick】の2枚だった。 特に【乙女と交わすTrick】は印象的。シャニPと大学生カップルのような遊びをする場面に困惑したものだった。

樹里は外見の印象に反し、意外と切ない味わいのコミュが多いイメージがある。 WING編やGRAD編の印象を引きずっているだけかもしれないが、自信が無いような不安げな態度をとることがある気がする。 おそらく、その辺りが好きな理由なのだろうが、樹里の性格付けを断言できるほどの知識は無い。 好きなコミュは【ゆらりゆられて】、【心に浮かぶもの】、【Clashmade】。

小糸以外の好きかもしれないキャラクターのコミュ読了数は約70%である。 サービス開始時から実装されたキャラクターは、あまりにもSSRの数が多すぎて、全部集めようという気にはならない。 ちなみに、透と円香のコミュ読了数は90%を超えている。そこまで集めた挙句に感想が「好きではない」になってしまったのは虚しい限り。

コミュについて

好きなキャラクターについて考えてみると、私が好きなコミュというのは平易な話が多い気がする。

シャニマスをそのような理由で褒めている人は見たことがない。簡単には噛み砕けない奥深さ、高尚さに価値を見出している人が多い印象だ。 noteなどでもさながら文芸作品のような評価をしている人が目立つ。シャニマスの批評という体で、新たに文芸作品を作ろうとしている人すらいる。 透や霧子、凛世のコミュを代表とする詩情に富み、暗喩が多いコミュがとりわけ人気が高いイメージがある。

私が美少女ゲームやソーシャルゲームに求めることは、安直な分かりやすさ、安っぽい共感と言ったところか。 もしかしたら、私はシャニマスに向いていないのかもしれない。 ファミ通のアンケートでは評判の良かった【裏声であいつら】、【フリークス・アリー】、【ふたり色 クレオール】は私にはしっくり来なかった。 闇の話題自体には関心があるのだが、「絆光記」で描かれた闇は私が好むものとは違った。 人気が高い冬優子のコミュは限定が多すぎて、集める気になれない。ファンの間で評価が高いコミュが悉く空振りだったため、どうしても警戒してしまう。

私は元より、詩情や暗喩の類が好きではなかった。 鑑賞する気になるかはともかくとして、権威が太鼓判を押す純文学やカルト映画であれば、頑張って考察やら批評やらを試みるかもしれない。 ただ、シャニマスは美少女がキャッキャウフフしているソーシャルゲーム。そこまで頑張って読む気にはなれない。

評判の良いシナリオも、誰ともしれないライターが書いているもので、途中でライターが交代している可能性すらある。 仮に同じライターが一貫して担当していたとしても、あくまで商売である以上、その思想や主義も含めて、どこまで一貫して執筆を続けられるかは怪しいものだ。 例外的に誰が書いたか判明しているシナリオもあるが、有名人というわけではなく、権威の裏付けもなく、一読者としてどこまで信頼が置けるかは不明である。 文章表現や演出、伏線といったものを色々と論じたところで、果たしてそれが報われるだろうか。 私には本気でシャニマスのシナリオに向き合うのは無理だった。 真剣にシャニマスに向き合うことは私にはできそうにない。

これからもシャニマスにはそれなりに付き合っていこうとは思う。 ただ、小糸のコミュを読んで、小糸に可愛いおべべを着せて躍らせて、 後はたまに他のユニットにちょっと浮気すれば、それで十分というのが正直な感想である。それ以上のことを求めるつもりはない。期待もしない。

2024年7月24日水曜日

小糸ちゃんのフィギュアについて

福丸小糸のフィギュア

今日、福丸小糸のスケール・フィギュアが自宅に届いた。その名も、「【はれのひ喫茶店】 福丸 小糸 1/7スケール」。人生で二つ目に購入した美少女フィギュアである。ちなみに、一つ目は「福丸小糸 ミッドナイトモンスターVer. 1/7スケール」。小糸ちゃんは可愛いねぇ。

このフィギュアには3種類の表情パーツが存在する。【はれのひ喫茶店】というカードの絵を元にしており、通常の表情はその絵を再現したものだ。

【はれのひ喫茶店】のカード
【はれのひ喫茶店】
「はれのひ喫茶店」とはカードに付属する物語の題名であり、この絵自体にはそこまで関係が無い。なお、この天使の衣装は【ミニヨンプチランジュ】という名前がある。
絵は『アイドルマスターシャイニーカラーズ』(©Bandai Namco Entertainment Inc.) より引用。

正直に言えば、通常の表情はフィギュアとしてはあまり好みではない。あの表情は繊細で淡い絵であるから成立しているのであって、フィギュアにするとやや物足りないように思う。そこで、3種類の表情から選択できる機能が活きてくる。

表情パーツの変更例
福丸小糸のフィギュア (笑顔)

前髪と花飾りのパーツは、手前に引っ張ると外すことができる。そうすれば、顔面を取り外して付け替えることが可能だ。ちなみに、表情パーツを取り外し、そのまま前髪パーツだけを付け直すと、下記のようになる。ぴぇ……。

表情パーツ無しの場合
福丸小糸のフィギュア (表情パーツを全て外したもの)

余談だが、スカートの中身もきちんと作られております。良かったね~。

2024年6月1日土曜日

禍話リライト「桜並木の道」

本稿はFEAR飯のかぁなっき様が「禍話」という企画で語った怪談を文章化したものです。一部、翻案されている箇所があります。 本稿の扱いは「禍話」の二次創作の規程に準拠します。

登場人物の名前に特に意味はありません。ただの仮名です。

作品情報
出自
禍ちゃんねる 泥酔スペシャル (禍話 @magabanasi放送)
語り手
かぁなっき様 (FEAR飯)

桜並木の道

高橋さんがタクシー会社に就職した頃の話。

ある春の日のこと。高橋さんはタクシー運転手としての研修を受けていた。先輩が運転するタクシーの助手席に座り、辺りを案内してもらっていた。タクシーは桜並木が美しい通りに差し掛かった。折しも見頃だった。

「桜、綺麗ですね」

「おう。この時期は結構お客さんいるんだよ」

タクシーが通りを進んでいると、高橋さんの手を誰かが握った。何者かの手は運転席と助手席の間、サイドブレーキの辺りから伸びているようだった。

ただ、このタクシーには高橋さんと先輩の二人しか乗っていなかった。先輩は両手でハンドルを握っていた。一体、誰が自分の手を握っているのだろう。

高橋さんは青ざめた。恐ろしくてたまらなかったが、下手に騒いで事故を起こすわけにもいかない。冷や汗をかきつつも、我慢して黙っていた。

通りは花見客で賑わっていた。そのため、タクシーは速度を落としてゆっくりと進んでいた。その間、謎の手は高橋さんの手を握り続けた。いつまでこの状況が続くのだろうか。得体の知れないものに触れられ続けて、さすがに堪えきれなくなってきた。手はすべすべとした感触から女性のもののように思えた。桜並木が途切れる頃、手はようやくいなくなった。現れたときと同じように、唐突に消えてしまった。

サイドブレーキの方を見たが何も無い。高橋さんは安堵の溜息を漏らした。すると、先輩がタクシーを停め、高橋さんの顔をまじまじと見つめた。そして、納得したかのように言った。

「そうか。君、山田くんに似ているもんな」

山田という人物が何者なのか、先輩は教えてくれなかった。

高橋さんは今もタクシー運転手の仕事を続けている。 桜が見頃の時期になると、花見客で賑わう桜並木の通りを巡回する。稼ぎのためには、その道を通るしかないのである。ただ、桜並木の道を走っていると、後部座席から首筋に息を吹きかけられることがあるという。

2024年5月10日金曜日

Creepypasta私家訳『長いリスト』(原題“The Long List”)

拳銃の写真

"Beretta Billennium 9mm" by lifesizepotato is licensed under Public Domain.

作品紹介

The Long Listを訳しました。Creepypasta Wikiでは“Spotlighted Pastas”に指定されています。「仕事をクビになった刑事の物語」というお題のコンテストで最高評価を得た作品とのこと。

ハムレット』の訳を要求されて困ってしまいました。これでよかったのでしょうか。CCライセンスのことを考えると、迂闊に引用するわけにもいかず。

作品情報
原作
The Long List (Creepypasta Wiki、oldid=1494430)
原著者
HumboldtLycanthrope
翻訳
閉途 (Tojito)
ライセンス
CC BY-SA 4.0

長いリスト

メリッサが14歳のとき、父親はメリッサをポッサムという名の薬物調合人に売り飛ばした。2ポンドのメタンフェタミンと動かなくなったトランザムを引き換えに。日中、ポッサムはメリッサを鎖で錆びた薪ストーブに繋ぎとめた。そばには水の入ったメイソンジャーとチェリオ1箱を用意した。その間、ポッサムはトレーラーの後ろのラボで仕事をしていた。スダフェドとエフェデリンの錠剤を砕き、アンフェタミンのガラスのような破片にするのだ。夕方になると、ポッサムはドアを開け、焼け焦げた化学物質から発せられる猫の小便のような悪臭を小さなトレーラーの中に漂わせながら、メリッサの鎖を解いて、料理や皿洗い、モップかけをやらせた。夜、ウシガエルが鳴き出し、コオロギがちぃちぃと鳴く頃、メリッサは拳を自分の口に押し当てるのが常だった。ポッサムが自分に覆いかぶさってくるときの苦痛の悲鳴を抑えようとしてのことだった。ポッサムの汗と化学物質による悪臭でメリッサは打ちのめされていた。

2か月後、カリフォルニア州ユーレカ外縁にある林の中で、ボーイスカウトの二人組が排水路からメリッサの全裸の遺体を発見した。青ざめた四肢が絡み合って、汚らしい排水渠のゴミと汚水から突き出ていた。事件は公的には殺人事件担当のマクレニー刑事に回されたが、スタンドラー刑事が助力しに犯行現場へ向かった。スタンドラーはメリッサの遺体の両腕を掴み、悪臭のする汚水と瓦礫の中から遺体を引っ張り出すのを助けた。遺体が汚物から引き起こされると、その首はぐらりと横にかしげ、見開いた目がスタンドラーをまっすぐに見つめた。一瞬、スタンドラーは、遺体の目の中に生命の微かな光が残されているように思ったが、メリッサの顔は灰色になって膨張しており、死後から長い、長い時間が経過していることは明らかだった。

スタンドラーは車の座席に深めに腰を下ろすと、読み古したハムレットの本を開いて、最後のページに自分が殴り書きした名前の長いリストを目でなぞった。クソみてぇな一週間だ。停職になり、保釈され、過失致死に問われて。スタンドラーは警察署長の郊外にある家の前に車を停め、クソデブ野郎が仕事から帰宅するのを待っていた。スタンドラーは長い名前のリストをじろじろと見つめ、ワイルドターキーを1パイントすすり、ぬるくなったバドワイザーで流し込んだ。スタンドラーは思った。14歳の少女にあんなことができる、あんな奴を生かしておけようか。誰がそいつがいなくなって残念に思うか。誰が気にかけようか。

そう、誰も気にかけなかった。誰もポッサムのクソ野郎のことをかけらも残念に思わなかった。スタンドラーがあの変態野郎の顔に向けて仕事用のリボルバーの弾を撃ち尽くした後に得たものは、2週間の有給休暇だけだった。

大々的な手入れだった。ラボ、数キロのメタンフェタミン、武器庫。部局の皆が幸せだった。彼が得たものは、2週間の有休休暇と、他の刑事や制服警官たちが開いた、「アリバイ」での賑やかなパーティーだけだった。

審問でどうしてそんなところへ出かけたのか質問された。管轄外の地域であるうえに、人っ子一人いない僻地にどうして向かったのかと。スタンドラーはただ情報提供者から得た手がかりから追及しただけだと答えた。

スタンドラーは何と答えるつもりだったのか。幽霊が探してほしい場所を教えてくれたとでも? 死んだ少女が墓から戻ってきて、スタンドラーに教えてくれたとでも? 暗い夜明け前の数時間、忌々しいほどの酔いから、苦しい二日酔いになるまでの黄昏時に、スタンドラーは汗ぐっしょりで目を覚ました。隣で妻が大いびきをかく最中、部屋がぐるぐると回り出し、心臓が胸から弾け出そうになったところを、彼女が、そう、儚い少女が、ベッドの足元に現れ、その棒人間のような四肢が白い寝間着で飾られ、その裾に深紅の筋を残したとでも?

最初にメリッサを見たとき、スタンドラーは叫び声をあげ、恐怖し、驚愕のあまりに上げた濁った声が乾いた口と喉を焼け焦がすかのようだった。妻が目を覚まし、ベッドから跳ね起きた。

「どうしたの? 何なの?」

スタンドラーはアルコールで腫れた目を瞬かせた。暗闇が広がるばかり。少女はいなくなっていた。何もなかった。

「何でもない。何でもないんだ。寝なよ。悪夢を見ただけだ」

「あっそ」

妻は再び寝転がり、すぐにまたいびきをかき始めた。スタンドラーは部屋が朝の日差しで青白むまで横になり続けた。肉体がひりひりと疼き、自分は何を見たのだろうか、気が狂いつつあるのだろうかと考えた。

再び少女が姿を現したとき、スタンドラーは前よりも静かだった。

スタンドラーは素早く二度瞬きした。少女の幽霊じみた姿が前回のように消滅することを期待したのだ。しかし、少女は姿を消さなかった。そこに居続けて、暗い眼窩に深く埋まった冷たい目でスタンドラーを見下ろしていた。スタンドラーは信じられないという顔つきで見つめた。あれは本物なのか? こんな青白い姿の存在が実在し得るのか? そのとき、少女はスタンドラーの方に素早く駆け上った。そして、その青い唇が開き、話し始めた。囁き声でスタンドラーに事情を説明した。自分の父親がポッサムに自分を売り渡した夜について少女がスタンドラーの耳に囁いていたとき、スタンドラーは少女の吐息から墓の臭いが感じられるように思った。

それは暗い夜、サザンハンボルトの僻地の奥深くでのこと。オルダーポイントとブロックスバーグの山々を過ぎた先の、トリニティの境、ジニアの近くの名前すらないその場所は、冬には雪が降り、冷たい朝では丘は氷で固まった。空は暗く、雨が降り注いでいた。メリッサの父親は酔っ払い、メリッサを乱暴に扱った。メリッサの腕を引っ張って、ぬかるんだ前庭を進んでいった。メリッサは怯えていた。父親の大きなダナーのロギングブーツが泥をはねかけて、自分の服をどこもかしこも汚したことにメリッサは困惑した。母親が死んでから3週間も経っていなかった。

父親はポッサムのトレーラーの前部ドアの先にメリッサを強引に押し込んだ。

「このガキはあんたのもんです」

父親は脂ぎったオーバーオールを着て顎鬚を生やした老人に向かってそのように吐き捨てた。

ポッサムは足を引きずりながら歩き、灰色がかって固くなった手でメリッサの頬を掴んだ。メリッサの顔をぎゅっと固く握り、よく見ようと前後に動かした。

「おお、可愛らしい」

「そう言ってくれるなら。このガキ、変な目だし、歯もひどい。でも、すげぇ上手く料理ができるし、掃除もできます。箒の扱いがクソ上手ぇんです」

「おお、いいね」

老人は含み笑いした。封のされたメタンフェタミンの袋を手渡した。

「きっとやってくれる。良くやってくれるね」

それから2か月後、メリッサは死に、ゴミのように捨てられた。

クソ野郎どもが。あの二人を生かしておけるものか。そして、誰もポッサムを残念がらなかった。誰も弔わなかった。人々はスタンドラーにパーティを開いた。スタンドラーは英雄になった。

そのときは。

その次は違った。奴はスタンドラーを停職処分にした。クビも同然だ。年金はない。401Kもない。いつか奴に会うことにさえなるかもしれない。

スタンドラーはウイスキーをちびちびと飲んだ。脚の間に手を伸ばし、ベレッタを手に取った。古い拳銃だ。昔、父親がくれたものだった。銃のどっしりとした冷たい重さを両手に抱えた。前の上司が来るのを待ちかまえた。あのデブ野郎が素敵な郊外の自宅に帰ってくるところをだ。多分、前庭のよく刈り込まれた芝生の上で奴が死んでいるのを妻が発見するだろう。それか、そいつの十代のガキの誰かが。まあ、あんなクソデブを父親にしていたのが悪い。当然の報い。

それは暖かい夜のことで、窓を下ろしておいていた。101号線を通り過ぎるトラックのヒューという音が穏やかに耳の中を響いた。

スタンドラーはハムレットのことを考えた。

大学で刑法について勉強していた頃に受けていたシェークスピアの講義について思い出していた。まだ、ロースクールに進んで弁護士になるという考えを楽しめていた頃だ。シャーロットが妊娠して、学校をやめて、新しい家族のために金を稼げるように軍隊に入る前のことだ。結局、妻は7か月後に死産児を産んだだけで終わり、再び子を宿すことはなかった。

ハムレット。幽霊に取り憑かれたデンマークの王子がいつもスタンドラーの頭から離れなかった。父親の幽霊が城の胸壁の上に立ち、残忍に殺された自分の仇をとってくれと泣き叫ぶ。

幽霊 : 時が近い。苛む硫黄の業火に、我が身を委ねばならぬときが。

スタンドラーはいつも思っていた、ハムレットは狂っていたのかと。いや違う。それでは全員狂っていることになる。ホレイショー、マーセラス、バーナード、全員がそれを見ていたのだ。全員が発狂することはあり得ない。それは本物だったに違いない。幽霊は実在するに違いない。

次に少女はスタンドラーに殺せと言った。事はポッサムのときのようには上手く行かなかった。

父親を。少女は囁いた。父親を殺せ。

奴を殺せずにはいられるか。自分の娘を売り渡すようなことをする奴は、間違いなく死に値する。メリッサは説明した。父親の車について、どこにいるか、トランクの中にメタンフェタミンがあること、運転席の下にいつもグロックを隠していること。

スタンドラーはブロードウェイのレッドライオンホテルで待機した。少女がその場所にするように言ったのだ。時計仕掛けのように、例の車がその駐車場に入っていった。スタンドラーは38口径の銃を目の高さに構えながら歩いてきたときの、男の顔に浮かんだ驚愕の表情を見て楽しんだ。スタンドラーはあの間抜けが一言も発する間も与えずにタマをブチ込んだ。

しかし、トランクにはメタンフェタミンはなかった。運転席の下に銃はなかった。しまいには父親ですらなかった。少なくとも、捜査官たちが言うには。連中はサンタローザから来たただのビジネスマンだったと主張した。

しかし、次の夜、メリッサがスタンドラーの元に現れた。月の光で微かに光り、悍ましかった。メリッサが言うには否、奴は父親だと。連中は嘘を吐いていると。あの全員が。嘘吐きが嘘を吐いたのだ。少女はスタンドラーに青白い唇と墓場のような吐息で囁いた。奴らは隠そうとしていた。それは陰謀で、署長も陰謀に加わっているから、スタンドラーを解雇したのだと。

だから、署長が次だった。スタンドラーは行かねばならなかった。だから、スタンドラーは奴の家の外に車を止め、両手に拳銃を抱いた。昔の上司を殺さねばならなかった。メタンフェタミン取引き、奴隷所有の罪がある堕落した外道を。

そして、これで終わりではなかった。

奴らは大勢いる。あの儚い幽霊が囁いた。

妻も奴らの仲間だ。あいつがリストを作った。あいつはヤクに溺れた売女で、クスリを求めて部局全員とヤりまくっていた。少女が全部教えてくれた。夜遅く、朝になる直前、大地が静かに冷たく膨張し、スタンドラーの心臓も脈拍を増して胸から飛び出んばかりになったそのときに。

ああ、奴らは大勢いる。リスト全部。そう、それは長いリスト。

2024年4月30日火曜日

6thPカップの記録

私はだぁれ?

Pカップ結果

P (プロデューサーズ) カップを走った皆様、お疲れ様でした。私は福丸小糸で走ってファン数1億1509万2915人、第61位でした。100位のボーダーは9500万人ほどです。

半年前はグレード4残留ができる程度でしたが、現在はグレード5・6を往復する日々。そんな状況で私が繰り出せた全力の構築がこちらです。

Viノクチル編成

満を持してリリースされたトワコレ小糸こと【あなた様へ紡ぐ】。Viノクチルで必須と言える【てやんでぇ】浅倉透。ユニットマスタリーSPが頼もしい【雨情】樋口円香。ビジュアルマスタリーMeやパーフェクトマスタリーが嬉しい【おそろしいかぐ!】大崎甘奈。なんとなく(!?)採用した【浮遊回帰線】黛冬優子。オーディションマスタリーSPのため採用した【魔法の階段を上って……】風野灯織。小糸自身と【てやんでぇ】の回避バフをトリガーに発動するパッシブスキルに頼って歌姫楽宴を攻略する編成です。

ちなみに、Viサポートとして汎用的な【silver◎lining】白瀬咲耶は所持してはいましたが、残念ながら無凸で採用に至らず。Viノクチルで必須とも言える【CR-EAT-I♥N】市川雛菜は所持してすらいません。グレード6残留ができない理由が垣間見えますね。【CR-EAT-I♥N】は小糸が可愛いコミュがあると聞きますから、所持しておきたいところでしたが、財政上の問題でセレクションチケットが買えませんでした。

トワコレを3枚も採用した贅沢な編成ですが、WINGを早く回すという点では全体札のある【セピア色の孤独】には到底及びません。Voノクチルはサポートが充実している点も魅力的。無理矢理編成を組むとすればこの通り。残念ながら、はづきさんが全く足りませんでした。

無理矢理Voノクチル編成

10位以上を狙うのであれば、【セピア色の孤独】を軸とした編成に切り替える必要があるでしょう。尤も、10位以上を狙うのはどのアイドルでも地獄が待っています。私はそれほどまでにキャラクターへの愛を表明するほどの気力はありません。ただ、プラチナ帯狙いでなくても、【セピア色の孤独】編成が可能であれば、他のアイドルの金の手紙も狙える余裕ができるかもしれません。尤も、小糸ほどに好きなキャラクターは今のところいません。

雛菜を少し走った形跡がありますが、「高レベルノウハウ発現率UP」のEXスキルを持っていたのが理由です。歌姫楽宴ノウハウを引き当てることも今回の目標でした。小糸もマスターで走っていました。結局、使う予定のないDaのレベル5と、Vo、Viのレベル4しかとれませんでした。

今回の金の手紙も前回と同様に小糸ちゃんらしい内容でした。字が小さくて可愛いですね。書き言葉にまで「……!」を使うのはお茶目すぎる気もしますが、可愛いから良し。

きみおもふ

「小糸ほど好きなキャラクターはいない」という話をしましたが、小糸よりも2・3段階下の立ち位置で好きなキャラクターならばいます。灯織と甜花の2人です。どことなく小糸と似た要素があるキャラクターですね。不器用で何かが足りない、そんな感じの娘。その次の位置にルカと樹里が来ます。ルカは歌声が好きというだけでこの位置まで上ってきました。樹里は意外と「暗い」ところがあるのがお気に入り。「暗い」という言葉には語弊があるとは思いますが、他に良い言葉が思いつきませんでした。小糸、灯織、甜花、ルカも「暗い」ところがあると思います。

ノクチルの3人も好きになる努力はしました。小糸が好きな3人ですからね。私も好きになりたかった。ただ、私には肌が合わなかったようです。嫌いではありませんが、そこまで好きでもない程度の立ち位置です。