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2025年10月19日日曜日

禍話リライトを網羅したページを更新し、シリーズ分類機能を追加しました

現在、禍話リライトを網羅したまとめを編集しています。

先日の記事で「ほぼ完成」と書いてそこまで日は経っていませんが、ここ数日にかけて大規模な更新を行いました。シリーズごとに分類する機能を追加しました。

今回、シリーズごとにまとめたページとして、下記を追加しました。

ここでの「シリーズ」とは、禍話で語られた話のうち、関連性があるものをまとめたものです。 例えば、「怪談手帖」のまとめページでは、余寒様提供の「怪談手帖」の話のリライトをまとめています。 「こっくりさん禁止の学校」のまとめページでは、こっくりさんが校則で禁止されている某学校を舞台とした話のリライトをまとめています。 「ネンネシナ」に代表される、いわゆる「ネンネ式」の話もまとめています。

下記の図に示すように、何らかのシリーズに属する話は、どのシリーズに属するかを右隣に記載しています。 この部分はリンクになっており、シリーズごとにまとめたページに移動します。

まとめページのスクリーンショット
右上の「こっくりさん禁止の学校」から「こっくりさん禁止の学校」シリーズのまとめページに移動できます。

ただ、このシリーズごとの分類機能には多数の課題が残っています。 どのシリーズに属するか判断するには、題名に明記されているものを除けば、禍話の放送を聞くしかありません。 放送を聞いても、明確には判断がつかないこともあります。 正直に申し上げますと、私は不真面目なリスナーで、気が向いたときにしか禍話を聞きに行きません。 どちらかと言えば、リライトを読むことに比重を置いています。 聞いたことがある放送についても、すべての話の内容を覚えているわけではありません。 そのため、シリーズに分類し損ねている話もあれば、逆に間違ってシリーズに分類してしまっている話もあるでしょう。 大変情けない話ではありますが、もし誤りがあれば、コメントなどで報告頂けますと幸いです。

そのような事情もあり、いくつかのシリーズをピックアップして、現状と課題について詳しく説明しようと思います。

〇〇の家

禍話では「〇〇の家」という形式の題名の怖い話が数多く存在します。「〇〇の家」のまとめページでまとめています。

放送中では、「タマホ〇ム」をもじって「 (まが) ホーム」と呼ばれています。 ただ、「〇〇の家」という形式の題名ではない話でも、放送中で「禍ホーム」であると言及されたものがあります。 逆に、「〇〇の家」という形式の題名でも、放送中で「禍ホーム」ではないと説明されていたものもあった記憶があります。

現状、まとめページではどちらのケースにもごく一部しか対応できていません。 実質的には、「〇〇の家」という題名の話を集めたリストにしかなっていません。

マルノミヤコくん

「マルノミヤコくん」のまとめページでは、「マルノミヤコ」を名乗る人物がかぁなっきさんに投稿した怖い話をまとめています。 ただ、「マルノミヤコ」さんはかぁなっきさんたちが創作した架空の人物です。 普通に考えれば、誰かが「マルノミヤコ」の名を騙っているということになりますが、果たして……。

「マルノミヤコくん」の初出は「震!禍話 第九夜」です。 この放送で「マルノミヤコ」を名乗る人物が送った怖い話が語られます。 「放送室」、「ラブホ」などはかぁなっきさんが明言していたため、「マルノミヤコ」提供の話と確定しています。 「リヤカー」や「休憩室」も「マルノミヤコ」提供の話だったのかもしれませんが、放送の内容を聞く限りでは曖昧です。

この放送の最後 (1;58:10辺り) に、まだ語っていない「マルノミヤコ」提供の話として、下記が挙げられています。そのうちの2話はどの話か推測できました。 残りの2話は見当がつきませんでした。そもそも語られていない可能性もあります。

「赤いクレヨン」の新しいバージョンの話
どの話か分かりませんでした。
洞窟内のお祭りの話
震!禍話 十二夜」の「洞窟の祭り」の可能性があります。この話はゲーデルさんによるリライトがあります。ただ、「震!禍話 十二夜」中で、かぁなっきさんが体験者と直に話をしたと発言しているため、「洞窟の祭り」はマルノくん提供ではない可能性の方が高いです。
ビルのスキマのヒロミさんの話
震!禍話 第十夜 佐藤君スペシャル②」の「ビルのスキマのヒロミさん」で間違いないでしょう。邪魅さんゲーデルさんによるリライトがあります。
教頭室の看護婦さんの話
どの話か分かりませんでした。はっきりとは聞き取れなかったため、「教頭室」ではないかもしれません。

禍話関係者の体験談

禍話では、関係者の体験談が語られることがあります。 シリーズとして体験談をまとめようと考えていました。ただ、数が多すぎて断念しています。

公開しているJSONファイルには、一部に「かぁなっきさん」、「加藤よしきさん」、「皮肉屋文庫さん」というように名前のデータが含まれるものがあります。これはこの計画の痕跡です。

そもそもの話

ここまで読んでくれた奇特な方であれば、こう思うでしょう。 「個人のブログに公開するのではなく、Wikiにリライトまとめを作って、不十分な箇所は集合知を当てにすればいいのではないか」と。ご尤もです。 ただ、あくまで自分の管理下に置いておきたいというわがままで、自分のブログに公開しています。

まとめを作る際に使用したJSONのデータを公開しています。このデータの利用は一切制限していません。 独自のリライトまとめを作ってブログに公開するも良し、Wikiを作るも良し。 私自身、うっかり頓死したり、唐突に禍話に対する興味を失ったりする可能性もあります。 そのときは、JSONデータを元に誰かがまとめを引き継いでいただけますと幸いです。

実を言いますと、元々は、私がリライトを行うときの参考にするために、このリライトまとめを作成しました。 リライトを書くのであれば、誰もリライトを書いていない話を選びたいと思っていたためです。 今回のシリーズ分類機能は、埋もれた名禍に光を当てることにも役立つと思います。 皆様にこのリライトまとめをご活用いただけますと幸いです。

禍話リライト「蝋燭の男」

かぁなっきさんが2018年12月の放送で、5年ほど前に聞いたと前置きして語った話。

ある日、仲の良い友人同士で集まってドライブに出かけたときのこと。男だらけでむさ苦しいが、気ままで楽しい時間だった。

夜の山道を走っていたとき、Aさんという人がトイレに行きたいと言い出した。

「できれば奥まった場所がいいかな、なんて」

「近くにコンビニなんてねぇぞ」

運良く車を停められそうな場所があった。辺りは竹林が広がっており、筍取りに来る人が駐車場の代わりに使っていそうな場所だった。 停車すると、Aさんは車を出て、慌てて走っていった。

車に残された友人たちは、そこら辺ですりゃいいのに、馬鹿だなと軽口を叩いた。 すると、Aさんはすぐに戻ってきた。あまりにも早すぎる。さすがに用を済ませたとは思えない。

車に飛び乗るや否や、Aさんは絶叫した。

「逃げろ。早く出せ。早く」

よく見ると、Aさんはズボンを濡らしていた。運転手も絶叫した。

「ふざけんな。新車だぞ」

「逃げろ。早く、早く」

「逃げろって、何からだ」

「後ろ見ろ、後ろ」

Aさんの必死の叫び声を聞いて、彼らは振り返った。すると、揺らぐ小さな明かりが見えた。目を凝らすと、明かりの正体は蝋燭だった。蝋燭の火がかなりの速さで竹林の中を移動していた。

揺らめく炎は車に近付いていき、それにつれて、蝋燭が移動する理由が分かってきた。着物姿の中年ほどの男が、火のついた蝋燭を持って、竹林を走っていたのである。

男の着物は薄手で、竹の枝で切り傷を負いそうな格好だったが、男は意に介していないようだった。 不思議なことに、かなりの速度で走っているにも関わらず、蝋燭の火は消えることがなかった。

蝋燭の火と謎の男の姿を見て、車内は騒然となった。運転手は急いで車を発進させた。 車を走らせているうちに、蝋燭の火は遠くなっていき、しまいには見えなくなった。 運転手は車を路肩に停めた。彼らはひとまず冷静になり、Aさんから事情を尋ねることにした。

「急に出てきたんだ。あのオッサン、絶対にオバケだ」

Aさんが用を足している最中に、先程の男が唐突に現れたという。人が走っているような物音は聞こえなかったそうだ。 竹林の中を走っていれば、体が枝や葉に当たって、普通は何か物音がする。 何の音もせず、ただ蝋燭の火と、奇怪な男の姿だけが見えた。Aさんは身を震わせながら、そのように説明した。

思わぬ災難に遭い、車内には重苦しい空気が充満した。 皆が沈黙している中、Bさんという男がおずおずと口を開いた。

「あのオッサン、走ってきたよね。こんなところに停めていたら、そのうちに追いつかれるのでは」

「結構離れたし、大丈夫でしょ。蝋燭の火も見えないし」

Bさんの表情は晴れなかった。

「でも、蝋燭の火を隠して、闇に紛れているかも。夜だから、蝋燭の明かりが無いと、見えないだろうし」

Bさんの懸念は当たっていた。突如、車の近くで蝋燭の明かりが出現した。Bさんの想像通り、男は蝋燭の火を隠して忍び寄っていたようだ。

車内は再び恐慌に陥った。運転手は発進しようとするが、慌てているためか、上手くエンジンがかからなかった。 不運なことに、運転手は喫煙者だったため、運転席の窓を開けっ放しにしていた。蝋燭の男は運転席の方に駆け寄ってきた。 男は何か話しかけていたようだが、皆の絶叫で男の声はかき消された。

「早く出せ。早く」

「来てる。来てるぞ」

間一髪のところで、車のエンジンがかかった。車は猛スピードで山中の道を進んでいき、蝋燭の火は見えなくなった。 車を走らせているうちに、車は街に辿り着いた。人々の日常の営みを示す明かりに照らされて、彼らはまるで生き返ったかのような心地がした。安堵のあまりか、車内を軽口が飛び交った。

「B、お前が余計なことを言うからだろ」

「俺が言ったおかげで気付けたんでしょ。俺のおかげだよ」

「元はと言えば、あんな近くで車を停めたのが悪い」

彼らが運転手を見ると、相変わらず落ち込んでいるようだった。Aさんが声をかけた。

「ごめん、変なことに巻き込んで」

運転手の顔は青褪めていた。

「そうじゃない。俺、聞いたんだ」

蝋燭の男が運転席に駆け寄っていたとき、運転手には男の姿が明瞭に見えた。男は蝋燭を燭台に乗せずに、素手で掴んでいた。 窓を開けていたため、男の声もはっきりと聞こえたのである。

「なんで熱くならないか、分かる? なんで熱くならないか、分かる?」

男はその言葉を繰り返していたという。

九州の山奥での出来事である。


本稿はFEAR飯のかぁなっき様が「禍話」という企画で語った怪談を文章化したものです。一部、翻案されている箇所があります。 本稿の扱いは「禍話」の二次創作の規程に準拠します。

どことなく既視感を覚えた方もいると思います。この話の数年後に語られるのですが、「禍話アンリミテッド 第二十二夜」(2023年6月17日) で朗読された忌魅恐NEO「思ったほど熱くなかった話」と共通する要素があります (高橋知秋様のリライトを参照)。何か関係があるのでしょうか。

なお、元の朗読は若干汚い表現が多いです。放送を聞く際はご注意ください。どのような内容かは察してください。

作品情報
出自
禍話R 第七夜 (禍話 @magabanasi放送、「ロウソクの男」より)
語り手
かぁなっき様
聞き手
佐藤実様