本稿はFEAR飯のかぁなっき様が「禍話」という企画で語った怪談を文章化したものです。一部、翻案されている箇所があります。 本稿の扱いは「禍話」の二次創作の規程に準拠します。
なお、「CD」と書いた部分は、語りの際には明言されていなかったため、実際は違うかもしれません。MDやカセットテープなどの可能性もあります。
作品情報
- 出自
- 震!禍話 二十二夜(序盤フリートーク) (禍話 @magabanasi、放送)
- 語り手
- かぁなっき様 (FEAR飯)
そんなのは嫌な話
Aさんが先輩のBさんたちとドライブを楽しんでいたときの話。
そのときは、Bさんの運転で峠道を走っていた。上り下りが激しかったせいか、後部座席に乗っていた友人たちは車酔いで気分が悪くなっていた。助手席にいたAさんは無事だった。Bさんは気分転換に曲でもかけようかと言って、アニソンを集めたCDを流し始めた。アニソンと言っても、大きなお友達が聞くようなものではなく、子供向けのものだ。
「ガキの頃に聞いていたヤツだけど、こういうのの方が逆に落ち着くかもしれないぞ」
車の中を、ドラえもんやポケモンなどの懐かしい曲が流れる。すると、Bさんがポツリポツリと話を始めた。
「実はさ、この辺はあまり良い思い出が無いんだよね……」
聞いてみると、Bさんのいとこがこの近辺で行方不明になったらしい。Bさんのいとこは、夜中に急に目を覚まし、のっぴきならない用事ができたと言って外に飛び出した。いとこが乗っていた車がこの辺りで発見されたが、本人は失踪したままなのだという。山狩りもしたが、痕跡すら発見されなかったそうだ。Aさんは和やかな歌に反して、突然に嫌な話を始めたものだと思っていた。
「『のっぴきならない用事』って何だったんでしょうね」
とAさんが聞くと、Bさんは言った。
「あいつ、彼女がいたらしいんだよね。ただ、家族や知り合いもそいつの彼女が誰か知らないんだ。それがちょっと気持ち悪くてさ」
「もしかして、その彼女って人の仕業だったんでしょうか」
「変な話して悪かったな。誰かに聞いてもらいたかったんだ。ごめんな」
車の中を「アンパンマンのマーチ」が流れていた。「そうだ うれしいんだ」で始まるあの曲である。Aさんは何気なく、
「いつか真相が分かる日が来るといいですね」
と呟いた。ちょうどそのとき、車内では「アンパンマンのマーチ」の
「わからないまま おわる」
の部分が流れていた。何故か、曲はそこから先に進まず、そのフレーズを繰り返した。
わからないまま おわる
わからないまま おわる
わからないまま おわる
わからないまま おわる
……
Bさんは急ブレーキをかけた。車内が騒然とする中、Bさんは曲を止め、CDを窓から外に投げ捨てた。
Bさんのいとこは未だに行方不明のままだという。
アンパンマンのマーチ ― 作詞:やなせたかし、作曲:三木たかし
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