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2021年6月12日土曜日

Creepypasta私家訳『暗黒の鏡映儀式』(原題“Dark Reflection Ritual”)

鏡と蝋燭のイラスト

"105040" by Biblioteca Rector Machado y Nuñez is marked with Public Domain Mark 1.0.

作品紹介

 CreepypastaであるDark Reflection Ritualを訳しました。

作品情報
原作
Dark Reflection Ritual (Creepypasta Wiki取得。oldid=1433055)
原著者
BishopStorm
翻訳
閉途 (Tojito)
ライセンス
CC BY-SA 4.0

暗黒の鏡映儀式

この儀式に必要なものは次の通り。

  • 鏡。どんな種類でもいい。
  • 蝋燭。どんなサイズや色でもいい。
  • 一緒に参加する友達。任意。ただし、かなりおすすめ。

警告しておくが、一旦、この儀式を始めると止める術はない。つまり、きちんと終わらせる気もないのに儀式を始めてはならないということだ。

うっかりでも、意図的でも、鏡を割ったことはあるかな。鏡を覗き込んだときに、向こう側から何かが自分を見ているように感じたことや、何か邪悪なものが鏡に映る自分の目の中に潜んでいるのを見たことはあるかな。鏡を割ると7年間不運が続くという言い伝えを聞いたことがあるだろう。

鏡にまつわる言い伝えは数百年もの間、そこかしこに存在してきた。特に、いくつかの古代文明では、鏡にはある種の浄化作用があると信じられていた。鏡に映った自分の目をじっと見ると、自分の負のエネルギーを鏡に映った自分に移すことができると考えられていた。これにより鏡には浄化作用があるとされたが、一方で隠された危険もあると言われていた。これが鏡を割ると不運になるとされる理由だ。考えてみてほしい。もし、この話が本当であれば、鏡を覗き込むたびに負のエネルギーを送り込んでいることになる。家の浴室の鏡の中にどれほどの負のエネルギーが溜まっているか、想像できるかな。鏡を割ると、負のエネルギーが解放されて、周囲にいる全員に不運をもたらすことになる。

この儀式が効果を発揮するには割ってもいい鏡が必要になる。前述の言い伝えによれば、この儀式の危険性と成功したときの利益は、鏡が古いほど大きくなる。考えてみれば分かるはずだ。古い鏡ほど誰かが覗き込んだ回数が多くなる。つまり、より多くの負のエネルギーが鏡の中に入っているということだ。

儀式を始めるには、まず、鏡に映った自分の目をじっと見つめる必要がある。最後にもう一度、自分の負のエネルギーを鏡に送り込むんだ。これは数秒やればいい。それから、前のめりになって鏡に息を吹きかけて、吐息で鏡を曇らせる。私が持っている文献では、「鏡に吐息を擦り込む」と表現されている。一見すると奇妙だと思うかもしれない。でも、少し深掘りすれば、“breath”(息) という単語がかつては「魂」と同じような意味だったことが分かるはずだ。鏡に息を吹きかけると、象徴的には自分自身と鏡を、そして鏡の中に蓄えられた負のエネルギーとを結び付けることになる。この結び付きが儀式を成功させるうえで重要だ。

次の手順に進む前に、儀式の参加者全員が同じようにこの手順を踏む必要がある。これが完了したら、蝋燭に火をつけていい。そして、その蝋燭で鏡を炙る。こうすることで、鏡の中の負のエネルギーを活性化させる。これは数秒だけやればいい。鏡に目につくくらい黒い焼け跡ができるまで続けてもいい。この手順を長く続けるほど、負のエネルギーはより活性化することに注意だ。

これを終えたら、最後の手順は鏡を割ることだ。一旦、この手順を実行したら、走って逃げ出すのがおすすめだ。よくある誤解が鏡を割ると不運がつきまとうというものだ。これは正しくない。鏡が割れると、悪いエネルギーは一つの場所、鏡を割ったところの近くに留まる。悪いエネルギーはいつかは散逸していく。少なくとも、普通はそうなる。

上記の手順を完遂すると、儀式の参加者と負のエネルギーが吐息によって結び付けられることになる。つまり、負のエネルギーは儀式の参加者をどこまでも追いかけてくるということだ。だから、儀式は複数人で実施した方がいい。儀式を一人だけで行えば、すべての負のエネルギーが一人だけを追いかけることになる。でも、集団であれば、負のエネルギーは一人の場合よりも薄く広がっていく。儀式を生き残る可能性を増やせるのだ。

不運は夜通し儀式の参加者をつきまとう。最初はちょっとした不運から始まる。爪が欠けるとか、タイヤがパンクするとか。それでも、ちょっとした不運は悪化し始め、どんどん恐ろしい出来事が身の回りに降りかかってくる。最終的には、生命を脅かすようになる。どれほど多くの人が儀式に参加してもだ。前にも言ったように、きちんと儀式を終わらせる気がないのなら、この儀式を始めてはならない。

夜を生き延びるために私が助言できる唯一のことは、負のエネルギーは吐息と結び付けられているということだ。吐息こそが負のエネルギーが儀式の参加者を探知するための手段だ。悪い状況にいると気付いたら、息を止めてみることだ。一時的に負のエネルギーが探知できなくなるはずだ。もちろん、それほど長く息を止められればの話だが。

それでも、この方法で危険な状況から逃れるための数秒間の余裕が生まれるかもしれない。

ここまで聞いて、きっと疑問に思っているだろう。一体、どうしてこんな儀式をやるのかとね。どうしてこんな風に自分の命を危険に晒すのだろうか。そうだな、儀式をするほとんどの人は儀式が本当に効くとは思っていないんだろう。ただ、そんなこととは違う真っ当な理由もある。

不運は儀式の参加者を夜通し追跡する。でも、夜明けまでどうにか生き延びれば、不運からの逃走が終わるだけじゃない。幸運が始まり出す。夜明けの最初の光は特別で浄化の特性がある。朝まで生き延びれば、鏡の中の負のエネルギーは浄化されて、体の中に戻り、体は正のエネルギーで溢れんばかりになる。この後は何もかもが良くなる。みんなが全体的に親切になり、異性からもめちゃくちゃモテる (君がそっちが好きなら、同性からだね)。何をやっても成功する。仕事の面接や、大事な試験、事業でも何でもね。宝くじを買うのもかなりおすすめだ。

幸運の量と期間は鏡の中の負のエネルギーの量と等価になることに注意しよう。店で買ったばかりの鏡では、幸運は数日しか続かず、大した幸運も訪れない。でも、古い鏡を使えば、幸運は遥かに凄まじいものになり、数か月続くかもしれない。鏡が十分に古ければ、数年間も続くかもしれない。鏡が個人的な繋がりが強いものであれば、つまりは、浴室の鏡や、寝室の鏡といったものであると、幸運は自分の好みや欲望により適合したものになる。

もう一つ警告しておくが、儀式のタイミングにも注意が必要だ。儀式は日没後に始めなければならず、夜明けまでに少なくとも6時間はかける必要がある。儀式を行う人が狙ってしまいがちなごまかしの策略が二つある。日中に儀式を始めるという策と、夜明けの数分前に儀式を始めるという策だ。

夜明け近くに儀式を始めるのは、こういったイカサマの中では最も危険が小さくて済むだろう。夜明け近くに儀式を始めると、負のエネルギーが発現するための十分な時間が経たないうちにまま浄化される。エネルギーはただ空中に散逸してしまうだけでどうとも作用しない。儀式は全くの大嘘だったと思うだけでおしまいだろう。

日中に儀式を始めるのはもっと危険だ。日光がすぐに悪いエネルギーを処理して安全なままにすると考えて、儀式を日中に始めてしまうわけだが、これは正しくない。私は夜明けの光に浄化する力があると言ったが、日光にその力があるとは言っていない。日中に儀式を始めると、不運が儀式の参加者を追跡する時間が増えることになり、生き延びる確率を大幅に減らしてしまう。

まあ、こんな儀式をしようとすれば、多くの人が愚かだとか狂っているだとか言ってくるかもしれない。私はそんなことは言わないがね。私なら儀式に参加しようと考えてしまうのは理解できる。自分の運をコントロールしたいと思うのも理解できる。良くも悪くも、人生が我々に投げかけているらしいでたらめな紆余曲折を受け入れるよりかは理解できるね。

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