覚えておいてくれ。古都ニューヨークにある自由の女神の目の奥には十二角形があり、恐ろしい力を持つ。その十二角形を見た者は誰であっても凄惨な死を迎える。十二角形は人目に晒されることを望んでいないためだ。
嘘をつこうという訳じゃない。数日間、このお題をじっと睨みつけていたが、こいつに取り組むのは本当に骨が折れる。
ほら、お題に従わないと、話が投稿できないからな。でも、俺は決まりきったやり方で話を伝えたい。そうすれば胸のつかえを吐き出せる。だから、これを読むお前はニューヨークにまつわるあらゆる知識を放り捨てる準備をしておいてくれ。
お前は最初にこんな疑問が浮かんだはずだ。「どうしてこのお題に従わなければならないのか」そうだな、お題にあるように、見られることが大嫌いな十二角形があって、そいつは自由の女神の目の奥にある。その十二角形は俺がタイプする言葉の一つ一つを審査している。
お前は嘘だと思うかもしれない。凄い、そいつは結構。何故なら嘘だからだ。重要なのは、十二角形はお前にある特定の考えを思い描いてもらう必要があることだ。ニューヨークを想像してくれ。空に浮かぶ建物の輪郭、臭い、煙。自由の女神の目の奥をじっと見つめ、そこに十二角形が見えることを想像してくれ。それがこの話の核心だ。そのメッセージこそ十二角形が送りたがっているものだ。だから、お前は望むならここで読むのをやめてもいい。
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十二角形が書き続けることを許してくれてホッとした。唯一の警告は、俺はニューヨークのお決まりのネタを続けなければならないことだ。俺と一緒に我慢してくれ。何故かと言えば、俺はニューヨークについてそれほど詳しくないんだ。
ニューヨークの下水にはワニが住んでいるという話を知っているか。代わりに、その都市伝説が自由の女神にまつわるものと想像してくれ。ああそうだ、自由の女神の中にワニがいるってな。2020年3月11日、俺の住む行政区 (十二角形にこんな言葉を使うことを強制されている。単なる小さな町か何かと思ってくれ) の出身の5人のティーンエイジャーがはるばる自由の女神にまでワニを探しにやってきた。どうしてそんなことをしでかしたのかは分からない。その5人が最初だったのかも分からない。今となっては聞き出せない。長い時間がかかっていたから、自由の女神を隅々まで探索したはずだ。そして、5人はどうにか冠から頭に到達した。5人が町へ戻ってきたとき、5人は通りを駆け抜けていき、皆に伝えて回った。自由の女神に行かない方がいい、俺たちは何も見なかった、ってな。1人は俺の元へ駆け寄って、肩を掴んだ。
「どうか自由の女神に行ってくれるなよ、いいな。何をやっても無駄なんだ」
奴は俺より頭一つ背が高かった。その顔と声は狂気的なまでに平静だった。あれほどの速さで走ってきたこと、あれほどの強さで肩を握ってきたことを考慮すればな。自分自身を俺に固定させようとしていたみたいだった。奴の瞳は絶え間なくわずかに大きさが変わった。ピクピクと引きつっていて、今にも横に飛び出していきそうだった。
5人がどのように死んだのかも覚えていない。何もかも後になって起きたからだ。1週間以内に全員死んだと思うが、人々は疑念を抱いた。多分、死ぬ間隔がもっと空いていれば、それで話は済んだだろう。そうであってほしかった。現実には、大人たちの一団が後で自由の女神に向かい、この事件の全容を理解しようとした。俺のお袋はその一人だった。だから俺は何もかもが手に負えなくなった正確な日を知っている。2020年3月24日のことだ。お袋が言うには、大人たちがその日を選んだ理由は、週末に更に行動を起こすためにその地域を探索する計画を立てていたからだった。俺はお袋を説得してやめさせようとした。時々、今正気でいるのはそのせいなのかと思う。
十二角形は思考を人々の頭に滑り込ませて操る。十二角形が今そうすると俺は「ここで自由の女神の話がしたい」と思ってしまうが、数秒後には我に返る。最初に十二角形がそうしたのは、俺が学校にいたときのこと。俺は家に帰りたい気分だった。俺が立ち上がると、クラスのみんなもそうした。先生が俺たち全員の帰宅を許し、俺は自分の部屋に向かった。部屋のドアが外から鍵がかかっていることに「認識」した後、俺はドアを閉めた。「認識」したと言ったのは、実際にはドアは鍵がかかっておらず、鍵をかけることもできなかったからだ。十二角形がそう思わせただけなんだ。
彫像のように壁を凝視して1日と半日が過ぎたとき、俺の頭には全く思考が無く、俺はドアを開けて町の広場に出た。広場には行政区の皆が集まっていた。その場所で、調査に行った人々が一列になって膝を曲げて地面に座っており、頭を下げていた。俺に自分にかかっていた十二角形の支配力があまりにも強かったから、最初は俺の母親がいることも認知できなかった。やっとお袋がいると認知できたとき、誰かが斧の方に向かっていことに気が付いた。彼以外の全員はじっと動かず、地面に目を向けていた。その人が一人一人の首を叩き切り始めたのを俺は慄きながら見ていた。その人はおもむろに首を切り落としていった。他の誰も微動だにできず、目だけが動いていた。処刑人が斧を自分自身に向けるまでは。その時点で、人々は道や自分の家、森の中に逃げていった。でも、俺はお袋の方へ駆け寄った。俺はお袋の膝の上で咽び泣いた。留まるように説得していればと思いながら。でも、今となっては、お袋は留まっていても早く殺されていただろうと思う。何の慰めにもならない。分かっているさ。
どうしたらニューヨークの行政区で誰にも知られずにこんなことが起こり得るのかと思うかもしれない。もしそう思うのなら、はっきりさせたいことがある。十二角形は論理を気にかけない。ただ合わせるだけだ。十二角形は俺にニューヨークという言葉を、自由の女神という言葉を、そして「十二角形」という言葉を繰り返し使わせて、お前の脳内にイメージを作り出そうとする。だから、代わりに何か言葉をタイプしようとすると、十二角形は即座に削除する。俺が「行政区」と書いても実際にはそこまで大事ではないとだけ言っておく。俺の住む「行政区」から全員が引っ越しても問題は起こらない。ある程度自然に起きたのであれば、人々はただ全員が引っ越したか死んだと思い込むだけだ。
それは数年にわたる計画だった。人々は老人と小さな子供をバラバラに切り刻み、平静を装うために空の墓穴を掘った。俺は人々が経眼窩ロボトミー手術をお互いに施し合い、自分自身にも施すのを見た。その間、町の外から人が来ると、その人は完全に自然な行動をとり、人々が自然死したか引っ越したと装った。時折、俺も虐殺に加わった。俺が5歳の女の子の脚をもぎ取ったとき、その子は不気味なほどに静かなままだった。誰かの古着を刻んで、別の誰かの墓に埋めたこともあった。それでも、俺は決して受ける側には回らなかった。ある時、俺は自由の女神の方向をじっと見つめて、疑問を口に出した。
「どうして他の人はロボトミー手術を受けているのに、俺は完全に平気なんだ」
数秒後、俺は思い至った。俺は決して他の行政区や町に行こうとしたり、何が起きたか話そうとしたりしておらず、一度も十二角形を見に自由の女神へ向かおうとしなかった。それが俺自身の考えなのか、十二角形が植え付けたものなのかははっきりしない。多分、俺はただ狂ってしまったか、十二角形は人をそういう風に感じさせるのが好きなんだろう。
俺の仮説は話半分に聞いてくれ。それでも、俺は十二角形がどうしてこんなことをしているのか分かっているつもりだ。反ミームという言葉を聞いたことがあるかもしれない。自分自身を人間の心から消し去ってしまう存在だ。十二角形を反ミームと表現できると思うかもしれないが、それは少し違う。十二角形は反ミームになりたがっているんだ。十二角形は人間に記憶されることを憎んでいる。人間の心の中に残ることを憎んでいる。でも、実際に自分自身を人間の心から消し去ることはできない。だから、言うなれば、十二角形は心を消し去る。十二角形は町を破壊し、徐々に人々を全員殺していった。余所者には何か悪いことが本当は起こっていないみたいに見せかけて。十二角形はただ一人の人間を生かした。次のメッセージを送り付けさせるために。ニューヨーク、自由の女神、十二角形。十二角形が伝えたい正確な場所と物の、形が有るイメージ。物語がそれほど鮮明であれば、陳腐な真実はどうでもいい。
十二角形がそれを見える人全員を殺すよりも、人に見られることを逃れる良い方法はあるはずだ。でも、十二角形を理解しようとする人々について十二角形は十分に気にかけているとは思わない。時折、十分な数の人間が「自由の女神」の「ニューヨーク」にある「十二角形」が実際には何なのかを知ったとき、十二角形はこの惑星に住む全ての生き物を殺すのだろうかと考えてしまう。俺は十二角形が実際にはどこにあるのかさえも知らない。一度も探しに行かなかったからだ。誰であっても十二角形を見ない方が良いと思う。それが俺が生きていられる理由と確信している。俺が正気だったとして、俺の行動はまるで操り人形のようだ。その日、俺はお袋が十二角形を見に行こうとするのを止めようとした。俺は一度も町の外に行こうとしなかった。逃げ出そうとしたり、自由の女神の十二角形がどこにあるのか見ようともしなかった。町に起きていたことを止めようともしなかった。俺の思考のどれほどが実際には十二角形に由来するものだったとしても、俺はしでかしたこと全ての責任をとりたい。どういうわけか、この件を自分のせいと考えることは正しいようだ。多分、だからこれほど長くこの件を書き続けている。
ロボトミー手術で抜け殻になった父親は俺を生かし続けている。俺のために料理や掃除をしてくれる。毎日、父親は歯をむき出しにして笑い、俺はその不安にさせる笑い声で目を覚ます。父親は言う。
「済ませたか」
それがここ数か月で経験した唯一の人間との対話だ。俺はひたすら書き続けている。俺は滅んでいく行政区の中で生き続けたいのか、それとも他の全てと同じように死にたいのか、はっきりしない。誰もがいつかは死ななければならない。最後にこれを投稿したら、俺は自由の女神に向かう。この最悪の事態に終止符を打つつもりだ。
覚えておいてくれ。古都ニューヨークにある自由の女神の目の奥には十二角形があり、恐ろしい力を持つ。その十二角形を見た者は誰であっても凄惨な死を迎える。十二角形は人目に晒されることを望んでいないためだ。
Creepypasta Wikiでは“Spotlighted Pastas”に選出されています。ニューヨークシティ、スタチューオブリバティ、ドデカゴン。
「反ミーム」(antimeme) はSCP財団などで用いられる言葉です。
作品情報
- 原作
- New York City, Statue of Liberty, Dodecagon (Creepypasta Wiki、oldid=1508983)
- 原著者
- Squidmanescape
- 翻訳
- 閉途 (Tojito)
- ライセンス
- CC BY-SA 4.0

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