本稿はFEAR飯のかぁなっき様が「禍話」という企画で語った怪談を文章化したものです。一部、翻案されている箇所があります。 本稿の扱いは「禍話」の二次創作の規程に準拠します。
作品情報
- 出自
- 禍ちゃんねる 泥酔スペシャル (禍話 @magabanasi、放送)
- 語り手
- かぁなっき様 (FEAR飯)
タオルが2枚
Aさんという女性が実家に帰省したときに起こった出来事。
Aさんが風呂に入っていると、隣の洗面所から母親の声が聞こえた。
「ここにタオル置いとくね」
タオル程度は自分で出せばいいのだが、久々の帰省だからか世話を焼いてくれているようだ。そんなことを考えつつ数分間が過ぎた頃、再び母親の声が聞こえた。
「ここにタオル置いとくね」
内容も声の調子も先ほどと全く同じ。タオルを2回も持ってきたのだろうか。違和感を覚えつつ浴室を出ると、洗面所にはタオルが2枚置かれていた。2枚とも使う必要はない。1枚だけ使って体を拭き、2枚目のタオルはタオル置き場に戻しておいた。
夜が深まり、家族全員がそれぞれ寝室に向かった。Aさんも床に就いたが、なぜか風呂場での出来事が気になって眠れなかった。どうにも落ち着かず、Aさんは布団から抜け出した。タオル置き場へ向かい、使わなかった方のタオルを手に取った。Aさんはどういう訳か、このタオルに厭な感覚を覚えた。どうにも薄気味悪くて仕方がない。Aさんはこっそりとタオルを処分しようとゴミ箱に捨てた。ただ、それでも気分は晴れなかった。そのタオルが家の中にあることさえも、なんだか悍ましく感じられた。
Aさんはタオルをゴミ箱から取り出し、家を出た。夜の闇の中、近所のゴミ捨て場まで歩いて向かい、タオルをゴミ捨て場に置いた。タオル1枚とはいえ、褒められたことではない。ただ、ここまでしてようやく落ち着いた。気分も良くなって家に帰ろうと振り返ると、そこには人がいた。同年代の女性だった。
誰とも知れないその女は、Aさんに話しかけた。
「やっぱり気付くか。あんた、お母さんと仲良いもんね」
Aさんが唖然としているうちに、いつの間にか女は姿を消していた。Aさんは身を震わせながらも急いで帰宅した。
その後、特におかしなことは起こらなかった。ただ、あのタオルの異常性に気付かなければ、何かが起きていたのかもしれない。
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