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2016年9月4日日曜日

立島夕子氏の話

検索してはいけないとかなんとか

 「あたしはもうお嫁にはいけません」という言葉を聞いたことがあるだろうか。この言葉は検索してはいけない言葉として有名な絵画の題名である。 描いた人が自殺したという噂が一部で流れているらしい。確かに不気味な噂が流れても不思議ではない衝撃的な絵画ではある。 実際は立島夕子氏という芸術家のウェブサイト『立島夕子の地下要塞』に掲載されている彼女の作品の一つである。1999年に制作されたものであるらしい。 このウェブサイトには絵画だけでなく、人形や写真の作品も掲載されている。 立島氏は1974年に東京で生まれ、女子美術大学を卒業している。現在は画家であると同時にパフォーマーでもあるという。 今回はこの立島氏について紹介したいと思う。

『あたしはもう お嫁にはいけません』

 件の『あたしはもう お嫁にはいけません』という絵画作品について、ニコニコ大百科の記事「あたしはもうお嫁にいけません」には立島氏のコメントとして次の言葉が掲載されている。

当時24歳、この絵を描いた当時私はある男性に付きまとわれ精神的に危篤でした。その男性の行動と過去の強姦未遂のトラウマが重なり表現された絵です。この絵は全ての性犯罪に対する私の決死の反逆の絵です。

 そう言われてみると、確かにそのような感じのする絵画である。特に描かれた人物の股間の辺りが。しかし、前述の記事にはこのコメントの出典が記載されていない。そこで、このコメントの情報源を調査したところ、『戦慄!世界の心霊・恐怖画像』という書籍であると判明した。

戦慄!世界の心霊・恐怖画像

表紙には例の作品も写っている。

 『戦慄!世界の心霊・恐怖画像』は題名と表紙を見る限りでは、コンビニか何かで売っている、暇つぶしになれば儲けものといった感じの書籍であるように見える。実際に読んでみたところ、「検索してはいけない言葉」を解説しているような内容だった。不気味な画像の乱立する中には立島氏の作品も含まれていた。 しかし、この書籍の特別な点は立島氏本人による作品についての解説が含まれていることである。それが前述の立島氏のコメントだったというわけだ。 この書籍にはこれ以外の立島氏の作品も掲載されている。本人のコメント付きで掲載されている作品を次に列挙する。

  • あたしはもう お嫁にはいけません
  • 美里自決
    自殺した友人を描いたものらしい。
  • VELVET
    この絵については立島氏はあまり言及したくないらしい。
  • 京曼荼羅
    Dir en grey」というバンドのボーカルの京を描いたものらしい。
  • 郁枝出棺
    事故死した友人の追悼のために描いた作品らしい。その友人は生前、「円蓮子」と名乗って人形を制作していたという。
  • 柘榴観音

 興味のある方は是非一読することをおすすめする。現在、この書籍は絶版らしく、国立国会図書館を頼るという手段が最も確実である。それにしても、どういった経緯でこのような本に立島氏はコメントを掲載することになったのだろうか。私にはこの書籍は恐怖をカジュアルに消費するためのもののように見えたのだが……。

立島夕子氏本人について

魂のアソコ
立島氏が出演していた映画。私自身は見たことがないが、Amazonのレビューによれば、立島氏の演技は「怪演」と評されるものだったらしい。

 立島氏は例の絵画が有名だが、舞踏を行っていたこともあるそうだ。 大豆鼓 (だいずこ) ファームという舞踏グループに1年間所属していたことがあったという。渋さ知らズのステージに立ったこともあるらしいが、集団生活に難があって離脱してしまったらしい。 また、役者としての経験もある。漫画家の山田花子氏の作品を題材とする映画『魂のアソコ』で主役の漫画家の役を演じたそうだ。 パフォーマーとしても活躍しているらしく、『BURST』という雑誌の第66号には立島氏のパフォーマンスの様子を撮影した写真が掲載されていた気がする (違ったらすまない) ([追記] 、Amazonの該当ページにて断片的に掲載されているのを確認。色々な意味で過激な内容であるため、閲覧の際は要注意)。

EATER vol. 8

BURST vol. 66

 立島氏はいくつかの雑誌でインタビューに応えている。

 2001年に出版された『EATER』の第8号では、1999年頃に友人として信用していた人物がストーカー紛いの人間に豹変したという事件が起きたと語っている。恐怖で心臓発作を起こして救急車に乗るほどの事態に発展したという。性暴力を受けた経験もあるらしい。これらの事件が有名な「あたしはもう お嫁にはいけません」などの作品に影響を与えている可能性はあるだろう。

 また、『BURST』の第66号では家族関係について語っている。父親は支配的な人物だったらしく、かなり悪い印象を抱いている。一方で母親とは仲が良かったらしく、個展には母親の遺影を飾っているという。立島氏自身については、リストカットの経験があるという話や、セックス依存症であるという話もあった。

 前述の『EATER』では2000年11月に行われた2回目の個展「爆心地のマリア」についての話も語られていた。 この個展の絵のテーマは「原爆」であったという。立島氏が小学生だったとき、担任の教師が原爆のケロイドの写真集を持ってきたことがあり、そのとき恐怖のあまりに写真集を見ないで逃げ出してしまったらしい。そのときの罪悪感から、小学校の図書館で原爆についての書籍を読み漁ったそうだ。 どういうわけか、子供のときから周囲には被爆者が多かったらしい。前述の雑誌では「何か、ずっと10歳の時から広島に呼ばれてるんですよ」と語っている。

 おそらく、立島氏はこれらの話題に関心があるのだろう。立島氏のTwitterアカウントでは政治的な話題がしばしば言及される。

このような作品の話ももちろん語っているようであるが、例えば次のようなことも呟いている。

 Twitterのプロフィール欄には「311以降、胆石、胆嚢炎発症(胆嚢全摘出手術により完治)、線維腫、虚血性大腸炎発症、原因不明の全身激痛発症。心の病気と体の病気は隠すのが面倒くさいので隠しません。NO WAR、NO NUKES!」と記されている。 ……何と言うか、典型的な芸術家というか、そんな感じのアレである。個人的にはこのTwitterアカウントは政治的な話題に耐性のある人物以外は読まない方が安全だと思う。 ちなみに、私は立島氏に話しかけたことは一度もないが、何故かTwitterアカウントがブロックされていた。

 以上で立島氏とその作品の紹介を終わる。ちなみに前述の『BURST』はアングラな雑誌であり、Twitterアカウントは危なっかしい話題に満ち溢れているため、立島氏について詳細を調べたい方は色々と注意することをおすすめする。

参考文献

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